出版社内容情報
北は奥州江刺から南は大隅国まで,全国を遊行した一遍(1239-89)の伝記.踊りながら念仏を唱える「踊り念仏」はその解放感で全国の民衆の間に流行した.絵は当時の生活・風俗を良く伝え,民衆史の史料としても貴重.
内容説明
法然・栄西・親鸞・道元・日蓮ら鎌倉新仏教の祖師たちの中で、とりわけ行動的な時宗の開祖一遍の伝記。北は奥州江刺から南は大隅国まで全国を遊行して、踊りながら念仏を唱える「踊り念仏」を主唱、全国の民衆の間に流行した。本書は、弟子聖戒が絵師と共に師の足跡をたどって全国を行脚して執筆、師の没後十年に成った。画図は当時の生活風俗を伝え、社会経済史・民衆史の史料としても貴重。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
浅香山三郎
10
栗原康氏の『死してなお踊れ』(河出文庫)からの流れ。栗原氏の本を読んでいたので、面白くよむ。教科書的には、一遍上人=踊り念仏、とだけ刷り込まれてきたが、その根底には、一遍上人の専修念仏への深い理解が窺へ、信仰をめぐる問答(和歌のやりとりなど)をつうじた教へ諭しのさまが面白い。2023/10/19
あとがき
2
一遍は他力の宗教者ながら悟りきったようなところがあり、ある意味で気持ちのいい人物である。「一代聖経みなつきて南無阿弥陀になりはてぬ」と、持っていた書物や経をすべて焼いてしまう場面などは思い切りがよくとても好きだ。/彼を神格化したい後継者の手によるという事情もあろうが、彼からは個人的な懊悩の類は感じられない。世俗的な生の虚しさを説いたりもするのだが、それは日本仏教的厭世感のクリシェの域を出ないように思う。ただし、そうした道歌の表現は卓越しており、単なる純朴な行動者に留まらない知性や精神性を感じさせる。2024/04/24
tyfk
2
「利益」ってもともと仏教用語か、「結縁」も頻出2023/08/28
misui
2
奇瑞起きすぎ紫雲たなびきまくりだが昔はそういうこともあったのかもしれない。竜が結縁に訪れるようなことも。とはいえ、遊行を経ていよいよ一遍往生の場面に到ってはそれなりに感慨は深かった。「あるじなきみだのみなにぞむまれけるとなへすてたるあとの一声」2017/07/27
AR読書記録
1
思ったこともろもろ。とにかく健脚/歌に、言葉の重複や韻を踏むことがとても多いのは、やはり口ずさみやすい、覚えやすいということがあったのか(例 我みばやみばやみえばや色はいろいろめく色はいろぞいろめく)/「まいりあつまりたるものどもを見るに、異類異形にしてよのつねの人ならず」とあって、『火の鳥』異形編で八百比丘尼を訪れる妖怪たちを連想したが、「田攵猟漁捕(狩や漁)を事とし、為利殺害を業とせるともがらなり」と続いたので、つまり被差別民のことか。ここだけの記述だが印象に残る/挿絵小さいので別にちゃんと見たいな。2014/08/17