出版社内容情報
聖徳太子(五七四‐六二二)は深く仏教に帰依し,その弘布に力を尽した.そうした事業の一環として「三経義疏」すなわち『法華経』『勝鬘経』『維摩経』の注釈執筆のことがあった.本書は大乘仏典中の第一の経典たる『法華経』二十七品の全部に独自の解釈をくわえたもので,太子の仏教弘宣の熱いおもいが脈々と息づいている.
感想・レビュー
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イプシロン
19
上巻は序品第一から信解品第四まで。序品・方便品は法華経の説法が行われていくのを、観客席から見ていくように記述。譬喩品に至って仏の立場から、信解品では翻って弟子の立場からの記述となる。これだけでも相当に客観的であり、カント哲学でいう悟性によって見た世界観といえるだろう。また本書を釈した聖徳太子は、先人の書物から学び、最終的には義疏という形で、自身の信仰を確立したであろうことが窺えたことは、信仰をもつ者にとっては亀鑑となると思えた。校訳は極東軍事裁判のA級戦犯処刑にあたって教誨師をつとめた花山信勝。2017/07/27
ギトン
0
経典の解釈というのが、こんなにおもしろいものだとは思わなかった。たまたま梅原猛氏の『聖徳太子』に触発された機会に、意を決して読み始めたのですが、推理小説を読むように夢中になってしまいました。 聖徳太子の仏教理解には独特のものがあると思いました。一言で言えば実践的。それが単なる信者でなく、一国を統治する立場の人だという意味は重い。もっと長生きして天皇になっていれば、この国の古代は違ったものになっていたかもしれません。 また機会があれば再読したい。2022/06/11