出版社内容情報
孫文(1866‐1925)が革命に捧げた40年間の生涯は,彼の自由と平和への熱誠と不屈の勇気に裏づけられている.主著「三民主義」は民族・民権・民生の各主義に分れ,当時の中国民衆が直面した課題に対する指針を力強く,平易に説いている.中国国民革命のリーダーとしての孫文の地位を不動にし,今日の基礎を築いた啓蒙の書である.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
15
タクシーの運転手に委ねていることの事例から、 政治を管理するものとしては、 巡査でも、コックでも、 医者でも、大工でも、仕立屋でもいいが、 専門家に委ねていくことの意味を問うている(40頁)。 機械は能、技師は権(51頁~)。 人民が権を有する(55頁)。 ニュートンは猫を可愛がったという(57頁)。 政とは多数の人、 治とは多数の人を管理する。 機械自体の力――治権、 機械を管理する力――政権(60頁)。 リンカーンではないが、 民有、民治、民享(73頁)。 2014/04/01
Francis
14
下巻は民権主義についての講演の一部と民生主義についての講演集を収める。民権主義編は欧米の民主主義はまだ発展途上であると中華民族主義者らしく批判するのだが、結論は五権憲法の構想なのでちょっとがっくり。民生主義編は極めて的確なマルクス主義批判を行いつつ、孫文独自の考えに基づく農地改革、大規模な国営事業の推進により経済を発展させることを説く。毛沢東に比べると孫文は発想が柔軟であり、性格も開放的であったことがうかがえる。2023/04/26
ぺおる
3
民生主義も読了。しかし第一講では鋭くマルクスを批判しつつ第二講では再びマルクス主義を(前講にやや対応せぬ形で)極めて高く評価するなど、評価に難しい。唯物史観を明確に誤りであると述べ、大政府主義を強く喧伝する様は共産主義思想というよりもむしろ社会民主主義的かもしれない。大著『共産党宣言』と対応し難い部分も多い。いずれにせよ、孫文はボリシェヴィズムに強く感化されたとはいえ、本書解説にもある通り彼の基本路線は飽くまで「反帝国主義」「民主主義」であったと考えるべきか。その果てに毛沢東の「新民主主義」があるのだ。2020/01/17
大ふへん者
2
近代アジアの代表的革命家、孫文。冷静にして豪胆。日本にも親近であり、私自身尊敬している憧れの人物。本書は彼の思想、理念が詰まった理論書。同時代人の岡倉覚三や内村鑑三などの思想にも似ているように思う。特筆すべきは、孫文の懸念と洞察が21世紀の今でも顕著さと有効さを持っている点だ。2012/11/04