出版社内容情報
中国最初の史書『史記』の最後にこの七十の列伝が置かれている.宰相,武将,循吏,酷吏,刺客,侠客,素封家等,司馬遷は貴賤を問わず「正義を保持し,ひとに屈せず,機を失わずして世にあらわれた人々」をとりあげ,それぞれにしたたかなこれらの人間の生きざまを,躍動する筆致で描き,史記の全体世界像を構成する.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
獺祭魚の食客@鯨鯢
38
「士は己れを知る者のために死す。」男は自分を理解してくれる一人の人のために命を投げ出す。 司馬遷の「史記」刺客列伝にある豫譲の名句。 今、自らの我が身を取り巻く不遇を振り返り、支えてくれた恩人への気持ちはこの言葉そのもの このような高い徳目を生み出したこの国の今の行動はいかほどのものか。あわよくばと手練手管で強欲を剥き出しにしている。 この名句には続きがある。「女は己れをよろこぶ者のために容(かたちづく)る」女は自分を愛するただ一人の男のためだけに美しくなる。決して女性蔑視の言葉とは思えない。2021/03/21
ビイーン
23
古代中国の王や武将、老子や孔子、韓非などの思想家の人物が多数取り上げられている。彼らは順風満帆の人生ではなく、陰謀や怨念、愛憎により非業な死を遂げたり、優れた才能がありながら一生世に認められなかったりする。本書は深い洞察による人間のリアルな姿が描かれていた。2巻へ。2020/02/08
ネコ虎
15
戦国の秦や斉、燕、韓、魏、趙等のせめぎ合い、合従連衡については全くついていけないが、指導者や将軍、賢人の権謀術数、駆け引きは今読んでも面白く、記されるエピソードは含蓄に富むものが多く為になる。 なお、テレビドラマ中国歴史劇、例えば「ミーユエ 王朝を照らす月」などは史記列伝の中に出てきて興味深い。 2022/09/11
MAT-TUN
11
なんという面白さ。このような歴史書はほかにない。宮中の美女たちを軍事訓練した孫子、楚と呉とで国際的に活躍した伍子胥、孔子の77人の門弟、秦の覇権の基礎を作った商鞅、猛将の白起、鶏鳴狗盗の故事で有名な孟嘗君、2500年前の古代の英雄の姿が目に浮かぶ。2011/12/12
Galilei
9
史記を読む時、人物をピックアップして参照し、読了とは些か趣が異なります。本編だけでも、偉人の人物像その思いのたけを判読できますが、やや物足りません。が、主題の史記に合わせて読むと、本書は一変して、史記の奥深さが溢れます。▽例えば、漢の大将軍の韓信は又くぐりなど逸話が多いが、劉邦に反乱を起こす心理が如実に知れる。また、盧綰は、劉邦が子供の頃から切っても切れない一心同体だったが、こちらも止むにやまれぬ政情に流されていく様を、列伝は端的に解説し、改めて史記に引き込まれてしまう。(感想は列伝1~4まとめて)2025/07/20