出版社内容情報
孤独感の文学的表現が中国でいかなる展開と深化をとげたかを『詩経』はじめ屈原・阮籍・陶淵明・杜甫・李白などの作品の解読を通じて明らかにする.と共にこれは鮮明な切り口をもつ中国詩への誘いの書でもあって,文学とは人生をしみじみと味うためのものだという著者(一八九四―一九五九)の想いが全篇にみなぎっている. (解説 茂木信之)
内容説明
孤独感の文学的表現が中国でいかなる展開と深化をとげたかを『詩経』はじめ屈原・阮籍・陶淵明・杜甫・李白などの作品の解読を通じて明らかにする。と共にこれは鮮明な切り口をもつ中国詩への誘いの書でもあって、文学とは人生をしみじみと味うためのものだという著者の思いが全篇にみなぎっている。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
14
人間は一面「社会性」をもつとともに、一面では「孤独性」をもっている。孤独ゆえに社会を作る。生命の不安感(10-11頁)という指摘がある。現代の無縁社会、孤独死、NEETひきこもり、SNEPとも無縁ではない。讒言の屈原(26頁)。陶淵明は、虚偽の多い時代に、策謀の多い虚偽に充ちた社会を嫌い、人生のはかなさを感じていた(165頁)。孤独感は寂寥感とともにあり、不安感と通ずる(240頁)。現代日本人の気分を相当程度、表わす。それらは杜甫。著者あとがきによると、孤独ゆえに思いやり、うるおいの世が渇望(326頁)。2014/01/31
韓信
4
『詩経』から屈原、阮籍、左思、王羲之、陶淵明、李杜まで、詩を中心とした中国文学に見える孤独感の表現の展開と深化を概観する論考。周囲と調和できないための孤独、時世にあわず不遇から生まれる孤独、社会の階級差による孤独、生命のはかなさに感ずる孤独など、各時代各人の孤独感を、秦漢代における「時」や「命」の発見、六朝期の社会格差、老荘思想の流行とそれへの反発など歴史的背景を踏まえて説き明かしており、中国文学の表現形式の発展史としても読める。陶淵明を孤独の描き方のひとつの到達点として評価している。2015/12/31
金吾
2
◎ 李白や陶淵明にはまっていた中学の頃はじめて読み大好きになった本ですが、10年以上読んでませんでした。 久々に読むとやはり面白かったです。2018/12/13
内藤銀ねず
2
中国四大詩人のうち陶淵明・李白・杜甫の三人をクライマックスとして、それまでの漢詩で孤独感がどのように表現されてきたかを、これでもかというくらい突き詰めた佳品。 普段何気なく目にしたり、使ってる漢字一文字でも孤独表現が顕れてくる著者の目に脱帽。
cdc@カエル王ピクルス
1
大学時代に神田の古本屋で求めた文庫を20年近くの時を隔てて開いてみた。中国の詩人たちの創作の原動力であったともいえる孤独感。不遇により、時勢により、或いは命の儚さにより生じた孤独感を洞察し、克明に表現する詩人たちの力は、古今止むこと無き愁いに寄り添う作品を生み出した。 基本的に皆、往時は不遇の身であったから、仮に時勢に適い、栄達できていたならば、作品も生まれず、本書も存在しなかったであろう。 ラストを飾る杜甫と李白は、漢詩の世界で同じ高みにあるものの、孤独感の捉え方の違いが際立ち、対照的であった。2025/03/31
-
- 和書
- 喫茶とまり木で待ち合わせ