出版社内容情報
美しい品物・良い工藝を求めて,日本各地・朝鮮・中国の民藝を訪ね歩いた柳宗悦の紀行文を中心に十九篇を精選した民藝紀行集.収録された昭和六年から三十六年までの三十年間にわたる紀行文を読むと,柳の民藝紀行が彼の工藝美論を実証する旅でもあったことがよくわかる.『手仕事の日本』とともに日本民藝の貴重な記録.図版多数.
内容説明
美しい品物。良い工藝を求めて、日本各地・朝鮮・中国の民藝を訪ね歩いた柳宗悦(1889‐1961)の紀行文を中心に19篇を精選した民藝紀行集。
目次
1 (地方の民藝;陸中雑記;蓑のこと;樺細工の道;思い出す職人 ほか)
2 (全羅紀行;台湾の民藝について;北支の民藝)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
16
「野州の石屋根」で、「石切の仕事は今は自由労働である。好きなだけ働く。つまり採掘の本数で賃銀を受ける」(89頁)。 時間ではなく、マイペースでできて評価される仕事。 民藝の条件はこの自由な時間の使い方、現代の裁量労働制は実はいいしくみではないか。 なぜなら、質の高い仕事をするためには必要な発想だから。 「『労働は苦痛なり』という前提は、手仕事の場合には強(あなが)ち当てはまりません」(102頁)。 苦痛説、快楽説。いろいろあっていいが、楽しみながらする仕事ほど労働の人間化といえるだろう。 2014/03/10
くらひで
5
国内・近隣諸国の優れた民芸品を探し回り、その伝統技法の保存の重要性を力説する。特に、素朴ながら、その地方の伝統や特色を色濃く残した物に対して高く評価。民芸運動の提唱者として各地の民芸品の発掘・収集・保存に力を入れた宗悦だが、彼の努力の後も生産量・消費量は減退しているのが実情。素晴らしい伝統工芸品を残し、地方の発展に寄与するような意識・志が必要だろう。味わい深い民芸品を見直し、日常生活で使っていくことから始めよう。作り手の思い、手作り感を大事にしたい。2015/04/06
AU
3
実用向きで変に美しさを志向していない品を美とする確固たる哲学とそこから決してブレない美醜の判断が印象的だった。ここに収録された紀行文は、柳さんの思想も蒐集の手続きも熟練してると思った。だからこそ民藝に傾倒するきっかけや哲学が確立するまでの過程(できれば試行錯誤の様子)も柳さんの文章で読んでみたいと、新しい欲求がわいた。雑誌「民藝」も読んでみたい。私も民芸品が好きであるが、そういった暮らしの品々に目を向ける・愛着を持つということこそが柳さんに発明された感覚であることを実感。2020/05/07
Kota
2
柳の列島各地のフィールドワークの記録。これと海外の旅の記録である『柳宗悦 随筆集』を併せて読むと、彼が希代のフィールドワーカーだったことがわかる。いわば柳は各地を歩いて工芸品を収集し、観察・洞察しながら、KJ法のような思考を重ねて「民藝」という、ある種の美の発見装置に辿り着いていったと思われます。このプラグマティックな方法は、ヘーゲルらの西洋美学と大きく異なるわけです。2016/12/28
merinido7
2
日田の皿山。絶賛。2014/08/27