出版社内容情報
無名の職人の手になる日常雑器の中にかつて誰も見出さなかった美を捉えたところに柳宗悦(一八八九―一九六一)の民藝運動が始まる.そして,終生,無銘の雑器が何故かくも美しいかを問い続けた柳は,晩年,念仏宗に帰依,他力道という考えに到達する.本書は柳の軌跡をたどるべく「工藝の美」等主要論文を精選. (解説 水尾比呂志)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
53
高名な本。読み出して、おや?だったが、貧乏性なもので、買った以上は意地でも最後まで。いろいろ勉強になった。メモは何度も。功績はあるが、毀誉褒貶も。感想は後日。2024/11/11
ロビン
16
無名職人の作った不断使いの雑器の中に、それまで誰も見出し得なかった美を見出した所謂「民藝」運動の旗振り役であった柳宗悦の論考をまとめたもの。日本民芸館には何回か訪問しており、土産物の藍染めのブックカバーを愛用しているが、これまで著書をちゃんと読んだことがなかったのを今悔やんでいる。ここまで熱く深みのある美学の本を読んだのは岡本太郎以来であった。流石美の新しい基準を見出し一派をなすほどの人は違うと唸らされる。柳は宗教哲学者でもあり、特に念仏宗に帰依したのだが、民藝運動と信仰を結び付けているとは知らず驚いた。2019/09/13
やいっち
10
ずっと仕事の車中の待機中に読んできた。11日に読了。冒頭の文章のやや高踏的というか(自己陶酔風とまでは云わないが)そんな語調に辟易したが、ぐっと我慢して読み続けた。「無名の職人の手になる日常雑器の中にかつて誰も見出さなかった美を捉えたところに柳宗悦(一八八九―一九六一)の民藝運動が始まる.そして,終生,無銘の雑器が何故かくも美しいかを問い続けた柳は,晩年,念仏宗に帰依,他力道という考えに到達する.」という内容だが、その前半の彼の事績には関心を払うに値すると読んで実感した。2024/11/11
せーが
5
読後、自分という存在の側に息づいている雑器、工藝品に宿るものを少しく認識できるようになった私がいる。それは人によって様態を変え、或る人には美しさであり、また或る人には温みであり、自然であり、宇宙であったりするのだろう。今、私自身に沁みいってくるものは「人と自然の調和、或いは融和」だ。幼い頃から直感的に器や日本的といわれるものに惹かれていた。ここにある言葉はその「わけもわからず惹かれるもの」ついて考えるきっかけを与えてくれる。共に考えてくれる。平に寄り添ってくれる。2025/04/26
春風
4
無名の職人による工芸(=民芸)を褒め称えるために、名人の作品や工業生産品をやたらとディスる柳先生。しかもその民芸が美しいか醜いかを判断するのは柳先生の直観でしかないのだよね。新たな「美の標準」を打ち立てようという気迫は感じるのだけれども。2015/04/29




