出版社内容情報
戦時下、国体思想に支えられた天皇制ファシズムに対して批判者として立ち続けた南原繁(1889-1974)。プラトンから危機神学に至るヨーロッパ精神史をたどり、カントに依拠して、国家は「永久平和」の実現に向けて不断に接近しなければならないと謳う。理念への信頼に立脚する批判精神の可能性を示す書。(解説=福田歓一・加藤節)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ex libris 毒餃子
6
ヨーロッパ精神史から読み解く国家のあり方についての本。ナチス批判が主であるが、それだけではなく国家と宗教がどのように関連してヨーロッパの国体を成形したかを論じている点も興味深い。日本政治学といえば、丸山眞男だがその師匠にあたる南原繁は東大総長として戦後日本の政治にかなりコミットしているので、南原がどのような政治思想を持っているかを知ることは戦後日本を分析するにあたり必要な事柄だと個人的には思う2015/05/10
シンドバッド
6
個人的には、第4章ナチス世界観と宗教に、強い興味があった。補論も有意義で、難しい論文ではあるものの、3割は、理解出来た。2014/12/19
Happy Like a Honeybee
3
ドイツ観念論の誘い。 戦前ドイツに留学し、現地でカントの薫陶を受けた南原氏の論文集。 後世の人間は西田田辺を中心に、戦時中は当時の思想家が翼賛思想一色と思いがち。 しかし筆者は日独伊三国同盟以前に、ナチス国家観を看破していた点はこの書物から証明できよう。 日本人はキリスト教に馴染みが薄いが、思想家として内村鑑三を押さえた方が良いかもしれない。2020/12/25
えむ
3
政治学者、南原繁の論文集。ヨーロッパの精神史を「国家と宗教」という問題から論じる。著者の立場が強く出ているが、刊行された時代との関連も含め、「学問」の意義を感じることができる1冊だった。2016/11/29
大臣ぐサン
2
プラトン、アウグスティヌス、カント、からのヒットラー。西洋哲学・神学がナチスの思想につながっていくとは思いもよらなんだ。2019/02/27