内容説明
あらゆる事象はゆくりないめぐり逢いであり、その邂逅の源泉に原始偶然が厳存する―。偶然性を定言的偶然、仮説的偶然、離接的偶然の三つに大別し、偶然性の本質を解明した九鬼周造(1888‐1941)の主著。ヘラクレイトスの偶然論とパルメニデスの必然論の対立以来くりかえし問い続けられてきた「偶然と必然」の問題への九鬼独自の解答。
目次
序説(偶然性と形而上学;必然性の本質とその三様態 ほか)
第1章 定言的偶然(概念と定言的偶然;綜合的判断の偶然性 ほか)
第2章 仮説的偶然(理由的偶然;理由的消極的偶然 ほか)
第3章 離接的偶然(離接的偶然の意味;様相性一般 ほか)
結論(偶然性の核心的意味;偶然性の内面化)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テトラ
29
卒論の主要テキストにしました。2017/12/29
おおにし
14
九鬼周造のラジオ講演原稿「偶然と運命」を読んで興味をもった彼の運命論をもっと詳しく知りたくて読んでみたが、難解な哲学書に歯が立たなかった。わかりやすい九鬼哲学解説書があれば読んでみたい。2020/10/04
CCC
13
「偶然」という言葉がどう使われてきたかという部分からのアプローチが長すぎるように感じたが、分類、細分化しているところは良かった。再検討の余地は多そうだけど、それだけ取り組みがいのある話とも取れる。『「いき」の構造』が遊びだとすると、こっちは本番といった趣か(これはどっちが良いという話ではないけど)。ただ的的性性しててあまり頭に入る文章ではなかった。注解には本当に助かった。2018/05/31
キョートマン
9
「偶然」と聞いてまず連想するのは確率。しかしこの本では、数学の確率が偶然とは何かについては何も語っていないと言う。たしかにそうだなと思った。それでは偶然とは何かについて、何だか興味深いことを言っていたがまだ説明できる気はしないので、いつか腰を据えて再読したい。2022/09/22
hakootoko
7
「世界はなぜ存在するのか」とふと思うのは、悲しみに暮れてではなく悲しみに打ち勝った暁へ落ちるそのときだ。死が直線飛行し、生が帆翔するのではなく、生と死の波状飛行が翼を閉じて墜落するなら、神の存在と全ての偶然性は一つである。林檎が落ちれば万有引力、恋に落ちれば存在と無。これは問題の偶然性、有限性が開く無数の無限、具体的普遍。偶然を鳥瞰する偶然の編隊飛行が暗い地上から朝焼を落ちて行く。遇うて空しく過ぐること勿れ。偶然よ、鳥となって、ときを知らせる、存在と無を告げよ。すっす、すっす、すっすっす。2022/02/28