出版社内容情報
波多野精一(1877―1950)は,日本において宗教哲学を体系的に確立した最初の思想家である.『時と永遠』は,波多野宗教哲学の到達点を示す代表作.無常にして不安定な現世の時間性を克服するためには,「他者」との生の共同による宗教的生によってこそ永遠性への道が開かれ
内容説明
波多野精一(1877‐1950)は、近代日本における宗教哲学を体系的に確立した最初の思想家である。『時と永遠』は、波多野の透徹した哲学的思索の到達点を示す代表作。無常なる現世の時間性を克服する真の永遠性とは何であるのか。永遠への道は、不死性でも無終極性でもなく、「他者」との生の共同、愛の人格的交わりにおいて開かれる。
目次
時と永遠
宗教哲学の本質及其根本問題
講演・小論(カントの宗教哲学について;ソフィストとソクラテス;歴史の意義に関してギリシア思想とヘブライ思想と;宗教学;プロティノスとカント宗教哲学の二つの任務;ケーベル先生追懐;三木清君について)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
5
文化は実在的他者との直接性における関係交渉よりの離脱、自然的生における没頭・拘束・緊張よりの解放、を意味する(29頁)。また、自己実現こそ文化的生の基本的動作である(32頁)。文化的時間は歴史的時間としてのみ成立つ(46頁)。文化的生の時間的性格は現在に尽きる(56頁)。将来は自由の領域である(62頁)。九鬼周造よりはわかりよいか。客観的時間は文化的時間の変種(68頁)。文化の世界には生のみあって死は無い(92頁)。永遠性は時間性を克服しつつむしろ完成する(214頁)。永続する文化の価値について考えた。2013/03/28
amanon
4
表題作を読むのは、これで三度目なのにも拘わらず、その半分も理解出来たか心許ないというのが、正直なところ。それでも第七章にはある種の感動を覚える。難解ではありながらも、不思議な吸引力を持つ作品であることを再認識した次第。それから本書全体を通じて、著者の思想を深く知るためには、カント理解が必要だと痛感。長いことスルーし続けてきたカントだが、これを機会に挑戦してみるかな?という気になった。それにしても、日本哲学界に不滅の金字塔を打ち立てた本書であるが、この系統を受け継ぐ哲学者が出てこなかったのは甚だ遺憾。2014/06/24
左手爆弾
3
細かい内容には言及しないが、日本にも優れた哲学者はいることを教えてくれる。西田幾多郎なんかより、こっちを読むべきだ。2014/01/07
大臣ぐサン
1
やっべ、超ムズ。近代日本の哲学はどれもこれも何でこんなに難解なんだ?戦前の宗教哲学をリードした波多野精一の「三部作」最終章。収載されている『歴史の意義に関して』なども興味深い。専門家でもなければかなり苦しいので、心して読むが良い。2012/09/16
海野藻屑
0
他者との精神的つながりは永続性をもつと。つながりのない世界に永続性はない。難しかった。2017/07/03
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- 和書
- カミュ歴史の裁きに抗して