出版社内容情報
関東大震災の時,憲兵隊によって虐殺された大杉栄(1885-1923)は,100年近く前にすでに現代の問題を鋭く予感し,自らの身体と感性で格闘していた先見的思想家である.自由な徹底した個人主義者にして社会主義者たる大杉の炸裂する精神の動き,流れを再構成できるよう,1912年から23年までの評論39篇を年代順に配列,収録した.
内容説明
関東大震災の時、憲兵隊によって虐殺された大杉栄(1885‐1923)は、百年近く前すでに現代の問題を鋭く予感し、自らの身体と感性で格闘していた先見的思想家である。自由な徹底した個人主義者にして社会主義者たる大杉の炸裂する精神の動き、流れを再構成できるよう、1912年から1923年までの評論39篇を年代順に配列、収録した。
目次
1(本能と創造;法律と道徳;座談 ほか)
2(労働運動の精神;徹底社会政策;知識階級に与う ほか)
3(無政府主義の手段は果して非科学的か―「社会主義および無政府主義に対する憲法上の疑義・その二」を読む)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
浅香山三郎
9
大杉栄の評伝や、甘粕事件については何冊か読んでゐたので、大杉の思想はそれらの本から知つてはゐたが、まとまつた形で読んだのは初めて。大杉は、本来の生身の人間を縛る装置やイデオロギーを排すアナキズム、サンディカリズムの理想を「生の拡充」として説く。また、ボルシェビキ(マルクス・レーニン主義)の危険性(理想の失敗、社会主義国家による労働者の抑圧などの、タテマエと現実の差違)をいち早く指摘するなど、アナキストの立場から、ロシア革命→ソ連の正統性を絶対視せぬ論陣を張る。大杉の人柄がよく出たセレクトだと思ふ。2024/09/25
どら猫さとっち
6
栗原康の著作、または村山由佳「風よあらしよ」で、大杉栄のことは知っていて、武田砂鉄の「マチズモを削り取れ」にも大杉の引用があった。本書は大杉栄の論評が収録されているが、奥付を見ると第一刷が今から25年前になっていて、少し驚いた。伊藤野枝とともに、アナーキストとして生きて死んだ大杉。彼の思想は、混沌としている現在社会に、大きな問い掛けになって投げかける。2021/10/24
ももみず
6
こんなパワフルかつ瑞々しい言葉を紡げる人って、そうそういない。坂口恭平が現代の大杉栄って言われるのも宜なるかな。「幾度ころげ落ちてもいい。要はただ、幾度でもそこへ登って行きたいのだ」(「正気の狂人」)。何度も捕まったり、神近市子に刺されたりしながらも、大杉栄は最高の山頂を目指し続けた。現代は失敗が許容されない社会だし、生きづらいな苦しいなって毎日思って生きているけど、今以上に息苦しい時代に、生の拡充を実現させようと奔走したこんな人間がいたことは、僕にとっても大きな活力となった。2014/08/21
メイロング
5
ずっとくだけた文章で、同じ部屋でくつろぎながら、大杉さんの話を聞いている感じ。決して古い考え方でなく、現代的な視点がみえてきてリバイバルブームの予感。2022/02/12
Saiid al-Halawi
5
上弦ではありません!の人。「生の拡充」はじめ、昔読んだものも多かった。この人で卒論書いたので懐かしい。パンチライン多数。「法律は折々圧制をやる。けれども道徳はのべつ幕なしだ。」p.242012/05/17