出版社内容情報
西田幾多郎は
内容説明
西田幾多郎は、論文を孜々と書き継いだ哲学者の印象が強い。しかし、西田は壇上に立ち、聴衆に熱く問い掛ける古代ギリシアの先哲の如き人でもあった。難解とされる自身の思想を分かりやすく説き、哲学することの意義を知って欲しいという思いを込めて語りかけた。語る哲学者の講演7篇をまとめる。最良の西田哲学入門でもある。
目次
Coincidentia oppositorumと愛
エックハルトの神秘説と一燈園生活
生と実在と論理
実在の根柢としての人格概念
現実の世界の論理的構造
歴史的身体
宗教の光における人間
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
7
講義と著作の合間に行われた講演を集めた本書はクザーヌスのCoincidentia oppositorum(反対物の一致)を西洋哲学の一元論の中に位置づけ、愛(アガペー)を他への執着でなく、他を大切にすると解する冒頭の講演(「Coincidentia oppositorum と愛」)から、神から分岐した人間(私)が分岐以前を反省する思考自身が罪の意識を生むという最後の講演に進む(「宗教の光における人間」)。旧約のエデンの逸話にある罪の問題を、著者は東洋的根本的実在から分岐する自己という場所的存在論に重ねる。2025/01/11
amanon
4
講演集ということで、多少平易な内容かと思ったが、他の著作とあまり変わらなかった(笑)。これを生で聞かされた人達は、どれだけ理解できたのだろう?と少し不思議な気持になる。内容的にも他の著作と被るところがかなりあり、「そういえば、こんなこと言ってたよな」という気にさせられた。著者自身が仏教に深く通じていたためか、文体もどこかお経を思わせる。なので、それこそお経のように何度も読み返せば、自ずと理解できるのではという気がしてくる。個人的には最後に収録されたものが、とりわけ興味深く読めたか。田辺との関係性も面白い。2020/09/04
無能なガラス屋
2
「論理にしたがって考えた一つの世界と、我々の日常の世界とが完全に結付き、全く一つのものにまでならなくては哲学の使命は果されない。論理で考えたものが日常経験と離れたものであっては何の役にもたたぬ。」2025/01/15
さえもん
2
言おうとしていることは分かる。時間的であり空間的である。主観的であり客観的である。一即多、多即一。たぶんはっきりと言葉で言い表すことは難しいのだろうけど、具体的にポンっとうまく言えないことがもどかしい。内面を出発点としてではなく、いろいろなものに応対して初めて自己が捉えられるというのが強く印象に残った。2020/07/26