内容説明
西田哲学は、人間西田幾多郎の実人生での苦悩とその超克の足跡とも言われる。たび重なる苦難の中、折々に詠まれた短歌は、哲学者の内面を如実に伝える。思索の深まりは、短歌の形でより端的に表現されることもあった。親族ら四人の回想記を併せて収録。哲学者の生涯をより深く理解するための貴重な証言である。
目次
1 短歌他(短歌;俳句;漢詩 ほか)
2 随想(或時の感想(『水明歌集』序)
『直現芸術論』序
島木赤彦君 ほか)
3 回想(わが父西田幾多郎(西田静子)
あの頃の父(上田弥生)
父(西田外彦) ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キョートマン
10
身の回りの人に先立たれすぎてて気の毒になる。詩から悲しみが伝わってくる。2021/03/10
roughfractus02
8
東洋の哲学は一つの分野でも職業でもなく日常であると著者の親友鈴木大拙は言う(『東洋的な見方』)。哲学者なる語に理性重視の西洋的イメージで覆うと、著者の哲学論文以外は哲学ではないかに見える。が、200弱の短歌、100弱の俳句、10を超える漢詩、芸術に関する随想、著者に関する近親者の随想を収めた本書は、言語を厳密化して組み立てる哲学ではない。日々の行為から思考が言語外の感覚や情動や感情も巻き込み生成する哲学である。絶対無に開かれた著者の自己の身体行為は、身近な者達の死に共鳴しその韻律に悲哀のトーンを滲ませる。2025/01/10
Kyohei Matsumoto
3
西田の短歌や俳句などが載っており、そのあと親族と親友の鈴木大拙が書いた、西田幾多郎という人物についての回想録が続く。親族の死という不幸が立て続けに起きるなかで常に哲学的思索を続けた西田のすごさについて書いてある。長女の弥生の文の最後に、「父は師友に恵まれ、弟子に恵まれ、時代に恵まれた上に、女性にまで恵まれた男であった。父はどうしたよき運命の上に恵まれた男であろうと思う事がある」というようなことも書いてあり、大変な境遇であり、且つ大変に恵まれた境遇でもあったという西田の人生がよくわかる本であった。2020/03/14
疲ゐ喪乃(ヒモの)
3
哲学者というの得てしてその思想から触れられるものであり、それが真理の探究についてのこととなれば、実感もわかずわかりにくいことと思う。この本はそんな哲学者ひとりの人間性をよく記した本だと思う。哲学といえど、それを考え書き記しているのは人間である。その人の考えを理解し、親しみを持つためにはその人の人柄を知らねば、人間像が動いてこない。これは西田先生の思想をより深く、そしてより親しみにやすくするための一冊である。是非、「善の研究」やその他の著書を読む前に一読いただきたい。2015/01/25
葛
2
2009年11月13日第1刷発行 編者:山口昭男 発行所:株式会社岩波書店 印刷:精興社 製本:桂川製本2018/12/22