岩波文庫
西田幾多郎随筆集

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 398p
  • 商品コード 9784003312476
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0110

出版社内容情報

京大退職のおり西田幾多郎は生涯を顧みて記した.教室の「黒板に向って1回転した」といえば私の伝記は尽きるのだ,と.この一句にはどれほどの人生の内実がこめられているのか.『思索と体験』以後のエッセイから選ばれた諸篇,細心に抄出された日記・書簡・寸言が切々とそれを語り伝える.人間西田の哀切極まりない内奥の声が響く.

この商品が入っている本棚

1 ~ 2件/全2件

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬参仟縁

32
加賀藩では、松雲公という殿様が書物好きで、支那から長崎へ積んで来る船の書物を、何があるかに関らず、一船そのまま買い込んだという(26頁)。鈴木大拙君は、何もない所から、物事を見ているような人である(70頁)。死の問題を解決するというのが人生の一大事である、死の事実の前には生は泡沫の如くである、死の問題を解決し得て、始めて真に生の意義を悟ることができる(77頁)。2016/02/19

roughfractus02

8
黒板に向かって一回転したと言えば私の伝記は尽きるといった著者だが、本書はその中心にいる哲学者としての著者の直線上の時間に配列された伝記の言葉の余白を指し示す思い出、追憶と追悼、思想、随想、歌と詩、日記抄、書簡抄の諸断片が集められた。黒板に向けて一回転する動力でありながら描かれた円から消える日々の感情の濃淡を記す断片は、好きな本や近親者の死等を語り、直接間接に悲哀のトーンを帯びるその硬質の文体は、絶対無としての死を含む自己が知性と文字を用いて分割し区別する人間世界の向こうに分割不能な根本的実在を指し示す。2025/01/09

なつき

5
西田幾多郎『西田幾多郎随筆集』読了。西田幾多郎というと難解で硬いイメージがあったが、この随筆集は非常に読みやすくそれでいて著者の柔らかいまなざしが垣間見え、私の勝手なイメージはがらりと変わった。「黒板に向って一回転をなしたといえば、それで私の伝記は尽きるのである。」すごいよねえ。2014/05/21

テツ

5
西田幾多郎の哲学書はとても難解で読み辛いイメージだけれど、こういった哲学的なモノから離れて書く文章は純粋で優しく、彼に対するイメージが変わってしまった。何というか周りの人間への思いを綴っている文章が全て優しい。哲学的な視点というのはどうやってもひねくれて穿った見方しか出来なくなるものだけれど、そういった視点から離れたときにどのような人間性を保っているかというのは、彼が哲学の毒に侵されているかどうかよく解る部分だと思う。2013/07/13

amanon

5
解説にもあるように、哲学論文では晦渋…というより、意味不明とさえ言える文章を綴る著者が、それ以外の文章ではその純朴さひたむきさが伺える文章を綴っているのが非常に印象深い。恩師、数々の友人、教え子、そして幼くして亡くなった長女や長らく病床にあった妻に対する思いを綴った文章はとりわけ心に染みる。中でもその後の活躍を期待されながら夭折していった教え子への哀悼には、些か飛躍するようだが「歴史的必然とは一体何だろう?」という気にふとさせられる。また戦争へと歩む日本を危惧する書簡には昨今の状況もあって共感する所大。2013/05/22

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/527719
  • ご注意事項

最近チェックした商品