出版社内容情報
明治の史学者・経済学者であり,政治家・実業家であった田口卯吉(1855‐1905)が,バックル,ギゾーなど外来の文明史に範をとりつつ経済事情と精神文化の相関関係を軸にして日本史を通観した著名な史論である.豊かな学殖に基づいて西洋の新思想と日本古来の伝統とを渾然と統一したこの文明史論は,わが国近代史学に深い影響を及ぼした.
内容説明
明治の経済学者で、政治家・実業家であった田口卯吉(1855‐1905)が、外来の文明史と日本古来の歴史に範をとりつつ、経済事情と精神文明との相関関係を軸にして日本史を通観した、初めての本格的文明史論である。豊かな学殖にもとづいて、西洋の新思想と日本の伝統とを渾然と統一した本書は、わが国の近代史学に影響を与えた。
目次
神道の濫觴より佛法の弘まりしまで
漢學の渡りしより京都の衰へしまで
封建の權輿より鎌倉政府創立に至る迄の地方の有様
鎌倉政府の創業より其治世の間の有様
鎌倉政府の滅亡より南北朝の戰まで
南北朝の戰亂以後戰國に至るまで
日本文學の起原より千八百年代まで
鎌倉政府創立以後戰國に至るの間日本文學の沿革
戰國亂離の有樣より二千三百年代の半頃まで
徳川氏禍亂を戡定せしより二千五百年代の末に至る
徳川氏治政の間に世に顕はれたる開化の現象
徳川治政の間勤王の氣の発せし事
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
13
旧字体で読みにくい。「飢饉疫病等の流行するは、皆な国神の怒を示し給ふ徴候なりと称して」(云々31頁)。飢えや病は神の逆鱗に触れて流行る畏れ。こうした畏れは民俗学で辛うじて抽出され得るが、現代人は文明に毒されてしまい、自然からの復讐なり、自然からの警鐘をまともに受容、斟酌、あるいは咀嚼できないでいる。「商人を以て善人とは云ふまじ」(53頁)。悪人とも限らないが、騙して金儲けというケースが多すぎる。「嗚呼人間豈他人の爲に世に生ぜんや」(101頁)。どうして他人のためにこの世に生れないのか? いや生まれている。2013/12/13
miyatatsu
8
現在使われていない漢字が多くて、読めない箇所も多々ありましたが、文明史を詳しく知ることができました。2018/11/17
式
1
自由主義経済思想、ギゾー・バックルの文明史、スペンサー・ルボックの社会進化論、素朴な唯物論を総合した漸進的進歩主義による文明史。保生避死と貨財の進歩という二法則で日本の歴史を紐解いた名著。神教政府の成立過程が特に面白い。論の展開があまりにも綺麗なのでこの本の全てを信じてしまいそう。明治の名著は文字の古さ故に読まれなくなってしまったのが非常に勿体ない。細分化が進んだ現代ではここまで優れた日本通史は到底ありえないので、三酔人経綸問答のように現代語訳さえあれば忽ち再評価を受けるのではないだろうか。本当に凄い本。2021/04/07