出版社内容情報
「日本の下層社会」において労働者の実態に深い観察を加えた著者が,わが国近代労働運動の黎明期に,労働階級解放の道を簡明直截に説いた書.当時の進歩主義者の見解を代表しており,その主張には現代的意義をさえ感じる.「大阪工場めぐり」は従来未発表のもの.そこに示された日本産業の幼稚な姿にこそすべての問題がある.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ymazda1
5
条約改正には負の側面もあるはずと、居住地の廃止は外国人との「内地雑居」状態を作り出し、これによって流入する外国資本により生じるであろう経済的支配に、どのように対抗していくべきかを著者なりに思考実験してみたって感じの本・・・階級闘争!に世界が塗りつぶされはじめる直前の作品ってのが、おもしろかった・・・「大阪工場めぐり」は、大工場から家族工場まで、資本家の側にも立ってって感じが、著者らしいなって思った・・・のちの「日立造船」で、最近、意味不明な社名変更をした「大阪鐵工所」って、この頃には創業してたのか。。。
にゃん吉
1
内地雑居後之日本と大阪工場めぐりの二編を収録。前者は、 居留地に隔離されていた外国人に居住移転の自由を認めることとなった本邦の未曽有の事態に、いかに備えるべきかという観点から、労働者の実情を分析し、労働者の団結や社会主義化の必要を説く構成。後者は、在阪の製造業者に取材して、経営の状況を概説する構成。取り上げられた企業は、マッチ、紡績、団扇や玉すだれ、帽子の製造といった労働集約型の軽工業が大半で、鉄工所等の重工業は若干混じる程度であり、当時の産業構造や、経営、生産の実情が知れて興味深いものがありました。2022/02/14
三月
1
「大阪工場めぐり」のほうが断然面白かった。各工場の職種ごとの賃金が書かれているが、どの工場でも女工・幼年工は男工の半分しか賃金をもらえていないことがわかる。軽工業における内職率の高さと、国内向け生産に対する輸出量の多さも注目のポイントだ。2015/05/18
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