出版社内容情報
ラテンアメリカの代表的な民話三七話を精選。ヨーロッパ、オリエント、日本などの民話と比較考量する解説を付す。
内容説明
ラテンアメリカに広く分布し代表的なもの、日本の昔話に関係がありそうなものを中心に37話を精選。それぞれの民話が世界の他地域でどのように変奏されているかなどについて、簡略適確な解説を付す。内容により、動物譚、本格民話、笑話、形式譚に分類。スペイン語文化圏であるアメリカ南西部旧メキシコ領で採話された民話も含めた。
目次
1 動物譚(ネコの夫婦(アメリカ・コロラド州)
ウサギとトラ(プエルトリコ) ほか)
2 本格民話(愛の三角宮殿(アルゼンチン)
歌う袋(ブラジル) ほか)
3 笑話(ゆで卵からヒヨコはかえらない(プエルトリコ)
少女と王子(メキシコ) ほか)
4 形式譚(十二の数え歌(チリ)
ゴキブリのマンディンガ(コスタリカ) ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
88
ラテンアメリカで語られた民話を解説と共に収録。日本の昔話(瘤取りじいさんなど)やグリム童話(ホレおばさんや金の髪を持った鬼など)、ロシア民話(魔法の馬など)、アフリカ民話(鳥黐で作った人形で精霊を捕まえる話)と似通った物語も有り、懐かしさを覚えました。一方で笑話は賢い(悪く言えば小狡い)者が得をするという話が多いという違いも面白いですね。そしてラテンアメリカではゴキブリがヒロインになるのにはたまげた(笑)しかもthe house that jack builtのような言葉の段々積みとはなんとも粋です。2020/04/16
エムパンダ
17
動物譚・本格民話・笑話・形式譚に分類された37話。スペイン・ポルトガルからもたらされた民話ばかりとのことで、元々のラテンアメリカ圏独自のものでないのは残念。三遊亭円朝によって落語に改作された「死神」がドミニカ共和国で伝わっているのは面白い。こんにゃく問答の類話もあり、宗教的権威を嘲笑することが世界に通ずるのも和む。2021/09/07
アドソ
15
マジックリアリズムの源流が感じられるかと思ってワクワクしながら読んだものの、意外にヨーロッパ起源と思われる話も多い。中には露骨にキリストを賛美するような話もあり、植民地支配の影響の方が目立ってしまう。ガルシア=マルケスがおばあちゃんから聞いたような昔話が読めると思ったのだけど、そもそもアステカやインカには民話が少ないようで、しかも文字で残されていないからしかたがないのだろうか。型の分類と世界の分布に関する考察は興味深い。メディアが発達した現在ではこういう研究はもうできないだろうから。2020/10/27
spica015
13
良書。「ラテンアメリカ」と構えて読むと、それほどその土地らしさというものは感じず、既視感のある素朴な話が多かったのだが、本書が優れているのは、その既視感がどこに起因するのかを丁寧に解説しているところにある。つまり民話全般における類型に当てはめ、世界にどう分布しているのかを説き、ラテンアメリカにおける採集数をきちんと明示しているのである。民話学の入門編研究書といっても差し支えない。とは言え、堅苦しいこと考えずに収録作品を読むだけでも十分楽しい。笑話がなかなかダーク。文庫でが気軽に読めるのが素晴らしい。2020/02/12
ハルト
11
読了:◎ メキシコ、チリ、アルゼンチン、その他と、ラテンアメリカに広く分布した民話を採取。動物譚、本格民話、笑話、形式譚に分類。素朴でありながら起承転結のような形式によって語られており、また一話ごとに解説が付いているので、面白く読めた。また日本にも似た民話が国際的に伝播しているらしいので、それも合わせて読みたくなった。本格民話と笑話に好みの民話が多かったです。2020/04/08
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