内容説明
「ポエジーは認識、救済、力、放棄である。世界を変えうる作用としての詩的行為は、本質的に革命的なものであり、また、精神的運動なるがゆえに内的解放の一方法でもある。ポエジーはこの世界を啓示し、さらにもうひとつの世界を創造する。」メキシコのノーベル賞詩人パス(1914‐98)畢生の一大詩論。
目次
序論 ポエジーと詩
詩(言語;リズム;韻文と散文;イメージ)
詩的啓示(彼岸;詩的啓示;インスピレーション)
詩と歴史(瞬間の聖化;英雄的世界;小説の曖昧性;実体のないことば)
エピローグ 回転する記号
補遺(詩、社会、国家;詩と呼吸;アメリカの詩人、ホイットマン)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ロビン
16
メキシコのノーベル文学賞受賞者の、非常に難解な詩論。スペイン語圏の詩人は勿論、アリストテレスからエリオットやマラルメ、李白や松尾芭蕉まで引用しながら「インスピレーション」「イメージ」など様々な角度から詩を分析する。オルテガは知的驚嘆こそは考える人間の特権であると書いたが、パスも「人間は驚くことのできる存在であり、驚きに満たされた時、詩化し、愛し、神聖化する」と書く。詩は宗教的なものと根を同じくするとも指摘し、詩作の能動性と受動性ー詩は詩人が作るものであると同時に「降りてくる」ものであることーの指摘に頷く。2025/06/30
ドン•マルロー
16
至言ずくめの詩論。著者自らも体現していたシュルレアリスムへの言及が実に鋭く興味深い。2020/01/31
傘緑
16
「人間の世界は意味の世界である。それは曖昧性、矛盾、狂気、あるいは混乱を耐えることはできるが、意味の欠如を耐えることはできない。他ならぬ沈黙にさえ記号が住みついている」読む度に付箋が増えはすれど減りはしない、そんな恐ろしい本である。普通に考えられている「詩論」とは本質的に異なっている、異質な本質的詩論ww詩を語る文章そのものが音楽的で、一つの長大な詩を読んでる感が…断言できないのは、語るもの触れるもの全てが詩になるというパスの知性と教養に私がついていけてないため、この本を十全に味わえる日は来るのだろうか?2016/09/19
ばん
13
詩を読みたくなる詩論と詩を書きたくなる詩論と言うのがあると思う。本書は後者の詩論として、圧倒的な力強さをもっている。ドイツロマン派、エロティシズム、世界中の思想の知識をもって、詩という、この聖なるもの、音、言葉を、統合として結晶させる。大胆な表現が精緻な論理に従ってうごかされていくダイナミズムを感じる様は、一級品の詩を読むのと変わりはないだろう。散文的な、明らかにする文章を、彼は度重なるイメージの連続で描きだしたのだ。僕はまた詩を書きたくなったし、自分の詩神を感じることという他者性を取り戻したいと思った。2012/12/29
∃.狂茶党
11
世界は、広大であり、 この本は重層的な世界を詩とともに、読み解かんとする。 様々なことについて語っていくのですが、詩の持つ、相反するものを結びつけたり、重ね合わせたり、混ぜ合わせる力を、重視してるようです。 これは思考の枠組みにも関わってくることで、道教などの東洋思想も縦横に引用される。 枠組みが固定してくるものに対する異議申し立てとして、パスの出自でもある、シュールレアリスムの考えを表明しているようにも見える。 言葉の密通は、権力の嫌うものでしょう。 2022/04/12