出版社内容情報
独裁政権下ペルーの腐敗しきった社会の現実を多面的に描き出すノーベル賞作家の代表作.
独裁者批判,ブルジョアジー批判,父と子の確執,同性愛――.居酒屋ラ・カテドラルにおける二人の人物の会話をとおして,独裁政権下ペルーの腐敗しきった社会の現実を描く初期の代表作.「これまでに書いたすべての作品の中から一冊だけ,火事場から救い出せるのだとしたら,私はこの作品を救い出すだろう」(バルガス=リョサ).(全二冊)
内容説明
安酒場“ラ・カテドラル”における二人の人物の会話を通して、独裁政権下ペルーの腐敗しきった社会の現実を多面的に描き出す、ノーベル賞作家の代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
126
ペルーのクーデタ前後を舞台に父と息子の立場の違いを、リョサ30歳頃に描いた作品。その場に居合わせた世代だから書ける生々しさがある。政変が落ちついた時期に、主人公は昔の使用人アンブローシオに会う。困窮していそうな彼を食事に誘うと、場末のレストラン「ラ・カテドラル」に案内された。そこのテーブルで交わされる会話と回想。文体と展開に慣れるのに時間がかかった。20年前、60歳のリョサは、1冊だけ自分の書物を救い出せるとしたらこの作品だと言ったらしいが、思い入れが強いのだろう。文学的には、下巻を読んでから。2018/09/29
NAO
67
新聞記者のサンティアーゴが、久々に再会したかつての父のお抱え運転手だったアンブローシオと安酒場ラ・カテドラルで交わした会話。二人の話の中で、独裁政権下のペルーの腐敗ぶりが浮き彫りにされていく。詳しい感想は、下巻で。
キムチ
46
8月の死にそうな時間 youtubeのバッハショータで中南米の状況を延々と見た。昨日、車中で延々と上巻を半分まで読んだが・・それを世界の元凶の一つ以上に認識は高まらなかった・・これも雑魚ゆえの哀しさ。読んでどうなるといった【日本人にあるある精神的貧しさ】なす技です。挫折★2024/11/25
田中
24
サンティアーゴは、実業家の父を冷眼視し大学入学後はコミュニズム活動に触発される。内務官僚で睨みをきかせるベルムーデスは反政府派の殲滅活動に忙しいが、愛人も囲う。元運転者アンブローシオとの対話に過去が回想され膨張するように展開されていくのだ。異なる次元の会話を並列し、出来事を錯綜させるから、一瞬、どこの事象かわからない。でも、その独特な文体に馴染んでくると、とても奥深い権力構造と個人の無力さが現れてくる。メディアと資本家が政権と癒着し両者が肥えるようだ。素晴らしい読書体験を味わえる傑作の一冊である。 2021/08/12
ユーカ
18
久しぶりに開いたら、なぜか自由間接話法や絡み合った時制が理解できるようになっていた。途端にこの技巧がもたらしてくれる刺激がやみつきに。ペルーの軍事クーデター、その時期をそれぞれの立場で生きる若者たち、そしてロマンスもあり。独裁者小説が好きなので、この重厚さはたまりません。間髪入れずに下巻に入りましたが、めちゃくちゃそそる書き出し…!2022/06/04