出版社内容情報
暴君ネロの気紛れさえゲームのように楽しむ,美と快楽の信奉者ペトロニウス.一本気なその甥ウィニキウスは,リギ族の王女への恋からキリスト教に心を開き,やがてそのことがペトロニウスの運命をも変えていく.爛熟期の帝政ローマを舞台に,愛と暴力,信仰と頽廃が入り乱れて織りなす壮大な歴史ロマン.新訳. (解説 辻 邦生)
内容説明
ローマ―この頽廃の都では恋など懶い日々のほんの一興。だが、ウィニキウスは心のすべてを傾けた。相手はリギ族王家の娘、人質の身の上、そしてキリスト教徒だった―。ヘレニズムとヘブライズムの拮抗を背景に、壮大な歴史ロマンの幕が上がる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
129
舞台はネロ治世下ローマ帝国。帰還した大隊長ウィニキウスはキリスト教徒の娘リギアと恋に落ちる。綿密な史科研究の上で執筆された畢生の傑作。主人公の恋愛成就のために奔走する叔父がペトロニウスという設定が絶妙で、趣味の審判者らの目を通して上流の堕落した道徳観や生活模様、嗜好など実に細々と描かれている。辛辣なまでに愚鈍なネロ、卑劣な廷臣たち、二枚舌を弄する似非哲学者など、脇役の生彩が豊かなのも重要なエンターテイメント要素。恐怖とプライドが交錯するやりとりはいつ誰が謀殺されてもおかしくない緊迫した背景を物語っている。2017/12/02
藤月はな(灯れ松明の火)
101
小学生の時、亡き大伯母から戴いた小学館の児童向け世界文学全集で一番、夢中に読んで忘れられなかった作品が『クオ・ワディス』だった。同時にずっと再読したいと思っていた作品でした。「魚」=キリスト教信者という考えやネロ皇帝によるキリスト教信者迫害もこの本で知ったんだよな・・・。再読すると当時の女性を「略奪品」、または「所有物」と見なす考えの傲慢さに憤りで青褪めるしかない。だけど、最も卑近でキチジロー的存在であるギリシャ人、キロンの事やリギアが感じたネロの不気味さ、ポッパニアのリギアへの嫉妬はすっかり、忘れていた2017/07/11
NAO
71
ネロ皇帝時代のローマが舞台。青年貴族ウィニキウスが夢中になった女性リギアがキリスト教徒だったことから始まる歴史大河小説。貴族階級ではないリギアと結婚するための策略、リギアの失踪、リギアの探索、と話が進む中で、ローマの爛熟ぶり、キリスト教がいかにしてローマ市民の間に普及していったかが描かれていく。2021/09/06
seacalf
27
普段参考にさせて貰っているブログで『最高に面白い小説』と紹介されていたら、読むしかない。 「~の神に誓って!」というローマ人特有の台詞回しに慣れた頃に、段々と話に没頭していく。 さて、この子憎たらしいウィニキウスがどんな風に変わっていくのか、中巻以降が楽しみ。 2016/08/10
kero385
21
今回は直接の感想ではなくこの本にまつわる私的思い出を。 最近寝る前に1ページ以上を少しづつ読む方法を試してて、ようやく1冊目を読み終えた。この長篇は高校時代に初めて読んで以来の愛読書。 高校時代に買ったのは3分冊に分かれててグラシン紙につつまれていた旧岩波文庫。懐かしい。で社会人になって紛失し、20年位前に再購入した。新しい版はステンドグラスがデザインされたカバー付きの新版で、同じく3分冊だった。私はずっと高校時代に購入した本の再販かと思いこんでた。恥ずかしい話、最近になって翻訳者が違うことに気づいた。2025/06/16
-
- 和書
- 子や孫に贈る童話100