感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Y2K☮
44
再読。町の利益を脅かすスキャンダルを隠蔽する町長、金持ちを憎みつつ金に汚い新聞記者、臆病な事なかれ主義のくせにリベラルを気取る印刷所の主、そして正義を叫ぶ己に酔って周りが見えていない医師。イプセンの意図とは違うかもしれないが、こいつら全員が「民衆の敵」と映る。いや彼らこそ身勝手で視野の狭い「民衆」の化身なのか。庶民は違う。庶民は群れない。数の圧力と自己保身の論理で良心を誤魔化さない。周囲とそれなりに協調しつつ(ここ大事)個の意見を持って流されない。迷った時に戻るのは「公」の精神。そんな庶民に私はなりたい。2017/03/12
松本直哉
27
水質汚染を告発する科学者、告発をもみ消そうとする行政、真実ではなく口あたりのよい物語だけを求めるメディア、それを鵜呑みにする民衆...水俣病や放射能汚染の対立と憎悪の構図そのままだなあと思いながら読んだ。全市民を敵に回しても自説を枉げず、多数派になびく人々の無定見を激しい口調で責めるストックマンのキャラが強烈だった。初めのうちストックマン支持だったのに、それが不都合な真実と知ると手のひらを返すように彼から離反してゆく新聞記者たちのご都合主義。多数派がのさばる民主主義は限りなく衆愚政治に近づくのだなと思う。2018/03/24
壱萬参仟縁
16
1882年初出。温泉がよくない、というような会話があるので、ちょっとな、と思っている。温泉は健康にいいはずだが・・・。ホヴスタト(「民報」主筆)は、「政治ですからな、人生に一番大切なのは、-すくなくとも新聞に一番大切なのは」(101頁)。人生に政治は二の次、三の次・・・だから、日本人は棄権しているのだが。本当の民衆の敵は、自分たちであってはいけない。民衆は連帯して、政治を変えねばならないのだが。2013/12/12
RED FOX
12
真実を警告した医者を、町長が、新聞が、民衆が追い込む・・・そして医者の反撃は?さすがに面白いなあ♪1939年当時の復刻版のため、漢字がことごとく旧字体で、読むのに一苦労。絕對、官廳、編輯局、實體、證據・・・よ、読めるかあ!・・・途中から慣れてくると、なんか読みづらいながらも面白くなってきた。2016/03/19
きつね
7
公害問題を告発しようとしたら、陰謀に巻き込まれ、「人民の敵」と宣告にされてしまう博士。村人達は「勇気がないから」彼を家から追い出し、彼の職を奪い、石を投げつける。民衆や報道記者の手のひら返しの早さがすごい。なお、『イプセン戯曲選集』(東海大学出版局)によって読んだ。2013/08/25
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- 和書
- 母と水仙