出版社内容情報
フィンランド各地で,カンテレ(竪琴)に乗せて歌い継がれてきた一大民族叙事詩カレワラ.19世紀初頭,ヨーロッパを覆った民族主義的気運のなかで,リョンロットにより採集・編纂された原典版からの,平明な口語による完訳である.本文中いたるところに豊富な暗喩がちりばめられ,晴朗な想像力の展開がみられる.
内容説明
カレワラは、フィンランド各地でカンテレ(竪琴)に乗せて歌い継がれてきた大民族叙事詩。19世紀初頭、リョンロットにより採集・編纂された原典版からの平明な口語による完訳。豊富な暗喩がちりばめられ、本文中いたるところに晴朗な想像力の自在な展開がみられる。上巻には、第1章序詩、天地創造から、第24章までを収録。
目次
序詩 天地創造 ワイナミョイネンの生誕
土の種蒔き 大きな樫の木 オスモの大麦
呪誦競べ
乙女アイノ
ベッラモの乙女の釣り
ヨウカハイネンの復讐
ポホヨラでのワイナミョイネン
ポホヤの乙女 船造り 膝の負傷(1)
膝の負傷(2)
サンポの鍛造〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
94
霊力、結婚儀礼、自然神話的解釈...サウナと妖精と森好きはここからきているのかな。旧約聖書を知っていると深い理解が可能みたい。命令文、否定文が多い。コーランのような高圧を感じる。2021/02/16
七色一味
34
読破。なるほど。『カレワラ物語』は滑稽なほど寓話化されているだけなんだな、ということが判明。キャラ読みしたらこうなるよって感じ(笑) そして、この叙事詩の根底にあるのは、ある種の民族主義かと。確かにこれがロシアから独立するに至る国民の心の拠り所のひとつとなったのも頷ける。──が。これを原文で読めれば、もっと何かを感じられたのではないかと。2013/05/10
Koning
26
再読なのだけれどこれはマストバイアイテムの一つ。上巻はワイナミョイネン誕生からイルマリネンのあれこれまで。当時大学書林から1冊だけ出ていたフィンランド語文法読本の著者小泉保による訳と註、解説がとてもよい。
おMP夫人
9
フィンランド各地に伝わる伝承をひとまとめにし、それらの主軸となるキャラクターを統一し、再構成した物語といったところでしょうか。神話というよりは昔話らしい破天荒な冒険活劇みたいなノリだと思います。レンミンカイネンのキャラクター性は受け入れやすいかもしれません。19世紀になってからまとめられたものなので、キリスト教などの影響を受けた改変や、編者による創作もいくつか見えますが、他国の神話・伝承との類似点も数多く見つけることができるのは興味がそそられます。2012/08/27
ma_non_troppo
4
「カレワラ」はフィンランドの民族叙事詩だ。エリアス・リョンロット(1802-84)というフィンランド人が自らの足で国中を回り、各地に散らばる吟唱詩人たちの口から、温和で粘り強いフィンランド族の魂を支えてきた詩歌を直接引き出し、採録、編纂したものだ。リョンロットはそれまでの知識人のように地主・官吏階級の家柄でなく、農民の出だった。貧しいながらも苦労を重ねて医師となり、採集した民詩の本を自費出版した。人間とは面白いものだ。彼は、数多くの偉大な口承詩人たちと接するうちに、自身も偉大な詩人へと成長していった。2011/05/27