内容説明
ドン・キホーテが読みふけり、正気を失う原因となった「世界一」の騎士道小説。騎士ティラン・ロ・ブランの地中海を巡る冒険と、絶世の美姫との愛の日々が、絢爛豪華な宮廷生活を背景に活写される。バルガス=リョサによる日本語版への序文を付す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
101
隠者となった元騎士ウォーウィック伯にアドバイスを貰った青年ティランは数々の武勲を立てて立派な騎士に成長する。馬上で居眠りするティランの登場シーンこそ間が抜けているが、その成長ぶりはあまりに完璧で成長物語としての面白味はない。その前のウォーウィック伯の遍歴に多くのページが割かれており、1巻は騎士道の基礎を徹底的に固めていくような趣き。また、武術大会など戦闘の複雑な手筈や風習も仔細に描かれていて、筋書きの荒唐無稽さを見事にフォローしている。婚前にフランス王子を試そうとするシチリア王女の利発的なところも面白い。2018/09/08
くみ
15
ティランロブランという騎士の活躍を描いた物語。成立は1490年。セルバンテスによると「騎士道物語の最高傑作」であり、「ドンキホーテが「夢中で読みすぎて頭がおかしくなった」お話である。 ティランは騎士の頂点なので、決闘の申込も多数。いずれも正々堂々が求められる。「騎士らしく」なければ公衆の面前で着物を剥がされ、熱湯を浴びせられ、修道院送りである。過酷すぎる。宮本武蔵方式は絶対ダメである。 そして決闘を見学するほうも大変。咳をしただけでも絞首刑。 異教徒との戦いも過酷である。のんびり読むはずが過激さに驚愕。 2017/10/20
TomohikoYoshida
5
小中学校のときにこの本を読んだなら、きっとその騎士道精神と隠者やティランの武勇伝に夢中になったことだろう。だが、現代の倫理観とは異なり、かなり残酷な世界である。何しろ、王の結婚の祝宴の武術大会は真剣勝負で負けたら死ぬし、たとえ勝ったとしても「卑怯な勝ち方をした」と言いがかりを付けられれば、果たし状に答えて真剣勝負。命よりも大切で、命ある限り貯め続けなければならないのが、騎士としての名誉である。現代に生きていると、命以上に大切なものなどあるものか、と思ってしまう。だが、夢中になって読んだことに変わりはない。2020/07/06
えふのらん
3
教会の守護者として全身全霊を尽くし、フェアプレーを徹底する絵に描いたような騎士の御伽噺。剣の十字形は磔刑を象徴し、それで異教徒共を駆逐せねばならない、具体的に殺せと指示しているのは中々衝撃的だった。戦争に勝ったあとも容赦なく残党を駆っているし、味方と敵の区別をはっきりさせている。普通は布教で言葉を濁すものなのだけれど、その辺りが大衆向けで無垢というか野蛮。まぁ内容も大衆文学なので、決闘すれば勝つし戦争すれば向こうから逃げていくし、戦後は讃えるか讃えられて終わる。物語として大して面白くはない。2022/10/18
santiago
3
犬と本気の噛み合いをして殺したり、自分が仕える王子が他国の王女を押し倒す手助けをしたり…現代の倫理観や騎士道のイメージでは計れない。2017/03/30