出版社内容情報
「娘たちの『はい』という返事をどれだけ信用しなきゃならないか」．若い娘との結婚を諦めた老人の述懐．どうかすると好色爺に堕しかねなかった彼が，むしろ物分りのいい人格者となってわれわれの共感を呼ぶ．家柄やお金にひざまずく母親，強いられて心にもない返事をする娘．従僕らのユーモラスな会話．巧緻をきわめたスペインの作家モラティン（1760‐1828）の喜劇．
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
95
あまり読む機会のないスペインの戯曲。70歳の男が10代の女性に求婚する喜劇で、軽やかなユーモアとペーソスがある。物語が滑らかに展開していくので読みやすい。プロットには思わぬ捻りがある。若い女性のハートを射止めようとするドン・ディエゴは好色な老人というより、人情の機微をよくわきまえた人物で、思わず応援したくなる。この老人が惚れる少女ドニャ・フランシスカは逆に世間知らずで高慢なところがあり、あまり好きになれなかった。結末のほろ苦い味わいが心に残る劇だった。2017/12/30
やいっち
48
29日は折角の休日なので、庭仕事はサボって、何か一冊読みきりたかった。幸い積ん読本に本書があった。著者が未知だったこと以上に、題名の印象が輕っぼくて敬遠してきた。偏見だった。なかなかの傑作喜劇。すれた現代人には古典風だが、一度は読んでいい。喜劇を織り成す構成が緻密なことに感心する。訳者解説も最後にしっかり読んだ。本作のスペインの文学史上での位置づけも含め、とても参考になった。2025/05/30
壱萬参仟縁
21
ドン・ディエゴ曰く、「嘘をつくという技術を教えこまれる のが早いか、世間では躾のよい娘さんと 呼ぶんですよ。 (略）その場かぎりの出来心によって曲げられ なくっちゃならないということを、世間では 飽くまで強いるんです」（106頁）。 世間体の胡散臭さ。 体面を保つ。 解説によると、 1811年には新国王ジョゼフ・ボナパルト によって、国立図書館の司書館に任命された、 モラティン。 ヨーロッパのあちこちの図書館を 訪れて、諸種の改革を、 はじめて実際に生かすことができた（140頁）。 2014/07/13
やいっち
6
29日は折角の休日なので、庭仕事はサボって、何か一冊読みきりたかった。幸い積ん読本に本書があった。著者が未知だったこと以上に、題名の印象が輕っぼくて敬遠してきた。偏見だった。なかなかの傑作喜劇。すれた現代人には古典風だが、一度は読んでいい。喜劇を織り成す構成が緻密なことに感心する。訳者解説も最後にしっかり読んだ。本作のスペインの文学史上での位置づけも含め、とても参考になった。2025/05/30
misui
5
黄金時代を後にして停滞する18世紀スペイン演劇界にフランスとスペインの伝統を総合した新演劇を完成させたモラティンの喜劇。望まぬ結婚を強いられた娘が親や後見人に仕方なくする返事がタイトルの「はい」で、新しい訳では『娘たちの空返事』になっているらしい。旧タイトルじゃなかったら手に取らなかったな。若いカップルに分別を見せて身を引く老人の姿が物悲しい。2020/05/19
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