出版社内容情報
スペインの民話は,説話ずきのイスラムの伝承と,新教国がとうに捨て去ってしまった中世の奇跡にまつわる伝承とをよく保存している.デカメロン風の神父と農婦の姦通話,芥川の「蜘蛛の糸」の原話「聖女カタリーナ」等,特徴ある民話七二 篇を精選.エスピノーサ(一八八〇―一九五八)はスペイン系アメリカの言語・口承文芸の研究者.
内容説明
スペインの民話は、説話ずきのイスラムの伝承と、新教国がとうに捨て去ってしまった中世の奇跡にまつわる伝承とをよく保存している。デカメロン風の神父と農婦の姦通話、芥川の「蜘蛛の糸」の原話「聖女カタリーナ」等、特徴ある民話82篇を精選。エスピノーサ(1880‐1958)はスペイン系アメリカの言語・口承文芸の研究者。
目次
謎話
笑い話
教訓話
メルヘン
悪者話
動物昔話
だんだん話
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あたびー
28
読了してから時間が経っていました😅ドイツ、フランスなどの民話で聞いたことのある話もあれば、初めて聞いたような話もたくさんあり、スペインだからイスラムの影響もあり、解説によるとインドに類話のあるものも。インドがイスラムに支配されていた時期もあるのだから、なるほどそうか。朝から大きなおならが出たから良い食べ物に当たる日だと言う狼の話とか、聖人の名前を言うたびにお布施の増える神父の話とか、なんかオチが落語っぽくて楽しい話が多い。似たような話でも独仏などと違う雰囲気が面白い。2020/10/29
藤月はな(灯れ松明の火)
17
潔癖なカトリックのイメージが強かったスペインのイメージがこの民話集でがらりと変わりました。そのため、レコンキスタ以降からスペインでのカトリックの思想の影響力が強まったのだなと分かりました。物語が悪人が最後まで得する話や不条理な話、姦淫の話など意外と人間性をあっぴろげに書いた作品が多かったです。マザー・グース、グリム童話の元ネタと思わしき物語やアフリカなど各国に伝わる物語との類似性が興味深かったです。世界の妖怪の講義では民話についての説明もあるので地域別の民話比較の資料としても役に立つのかもしれません。2011/11/09
COPPERFIELD
12
モロッコ、南スペインを旅するにはうってつけ。レコンキスタによる1942年のグラナダ陥落以降も、スペイン人がアフリカへ退いたイスラームの影響を受けていたかが感じられると思う。 謎話、笑い話、教訓話、メルヘン、悪者話など、偏ることない内容であり、通読せずとも気になったところから読めばよい。僕は飛行機の中やバスの中で何度か、クスッと笑ってしまった。 芥川の『蜘蛛の糸』の元ネタ『聖女とカタリーナ』も収録されている。 本書とともに旅をすれば、マラガのカスバも、アルハンブラ宮殿も少し違った風景に見えてこよう。2014/03/22
Kira
8
本書は昔話集として楽しめるだけでなく、わかりやすく解説された「民話の比較のための注」が巻末についているので、グリムの昔話などとの類似性も楽しめる。おさめられた八十二篇の民話は整然と分類されている。その教訓話にある「聖女カタリーナ」が、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の原話として有名だとは知らなかった。「悪魔の名前」がイギリス民話の「トム・ティト・トット」にそっくりなのも楽しかった。 2017/10/30
秋
4
中世頃の昔話が中心のためキリスト教の色が濃い。ただ、キリスト教の色が濃い割に司祭の間男率が凄い。出てきた司祭の半分ぐらいは愛人作ってる腐れ坊主的な扱い。個人的に好きだった話は「兵士のフアン」。聖人達と旅をし、天国を求めるよう諭されても我欲に忠実に生きる。悪魔がお迎えに来ても悪魔を虐める。とうとう地獄の門に着いたと思ったら悪魔達に門前払い。『仕方なく』天国の門に辿りつく。日本昔話にも地獄から娑婆に追い出された『地獄のあばれもの』なんて話あったな~。地獄からも追い出される人は世界に一定数居るんだな。2016/09/28