出版社内容情報
20世紀スペイン演劇に指導的役割を果たした劇作家ベナベンテ(1866‐1954)の代表作.人の世における成功の秘訣は,人の同情を集めることではなく,周囲に都合のよい利害関係を作りあげることにある,というのがこの劇の中心テーマ.登場人物たちの機知に満ちた会話を通して,利害関係によって動く世相を諷刺する.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
3
スペイン演劇。旧字体。中年放浪者で曲者のクリスピンは評者のような性格かも。「現社会の苦しい必要といふものは、最も高潔な男子を謳って賤しい職に就かしめたり、最も高潔な婦人を強ひて下等なふるまひに出でしめたりし勝ちですが、この下賎と高潔が同一人物中に混合しては、世間の信用を失はせます。しかし、通例一人の裡に並び存するものを二人に分けて示すところが細工の妙」(36頁)。評者の人生は、底辺も上層もそれなりに経験していることか。偏差値的に。利害関係だけだと我田引水で社会全体のことを忘れてしまう。蛸壺世界では幻滅だ。2013/03/08
takeakisky
1
これも三田、小川書店。永田訳は気分のいい日本語が楽しみ。無茶苦茶なすじに勢いを与える。ちゃらっぽこをお言ひでない!なんてのがぽんぽん飛び出して、愉快この上ない。実にちゃきちゃきした心地よさだ。シレーナは、小原乃梨子の声で聞こえてくる。ちなみに、レアンドロはアランドロン(野沢那智)で、クレスピンは小三治。人物は類型的で目新しさはないが、結末まで展開がよく練られ、古典的幸せ気分に浸れる一本。他も読みたくなる満足度。2025/02/24
Tenco
1
ふらりと現れた悪党が自分は身分のある者だとハッタリをかまし、あとは愛と信頼の自転車操業。これはもちろん破綻する。クリスピンが調子よく持ち上げるのに対して「さうだ」としか相槌を打たないレアンドロが、徐々に青ざめていく様子が目に浮かんだ。この作品を象徴するシーンかも?旧字体や古い言葉遣いが堅苦しい雰囲気を出す中、登場人物のコミカルな動きが良いギャップになってて面白かった。すべての利害の源泉たるポリチネーラも悪党らしいけど、さいご自己中連中にボロクソ言われてて可愛そうだった。楽しかった。2020/08/23
葛
0
1928年1月5日第1刷発行 2010年2月23日第4刷発行 訳者永田寛定 岩波文庫 昭和2年12月22日譯者あとがき2017/06/04
v&b
0
MVP:法律博士 cf.ヴォートラン(リュシアン)とラスティニャック クレスピンとレアンドロ2016/02/19