出版社内容情報
アウグスティヌスの『告白』を座右の書としていたペトラルカ(1304-74)が,精神的な危機に直面していた自己を救済するために,自己とアウグスティヌスとの対話形式で,人間の不幸,罪,救いを論じた散文の最高傑作.徹底した自己分析をおこなったこの書物は,ペトラルカの人物や文学の秘密を解き明かす鍵となるものとしても興味ぶかい.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
111
ルネサンス期の文学の名作。訳者によるとペトラルカはこの本を何度も推敲して、生前は公にすることはなかったそうだ。ペトラルカ自身と聖アウグスティヌスの対話を中心に組み立てられた物語だ。ペトラルカは、アウグスティヌスに怒られてばっかりで、ちょっと気の毒になる。さまざま欲望を理性でコントロールせよというアウグスティヌスのアドバイスは真っ当だが、面白みに欠けて鼻白んでしまう。美しい女性に目がくらみ、詩人としての名誉を望むペトラルカは俗っぽい。それでもこの世俗的な生き方が、否定されているわけではない。(続きます)2017/04/17
兵士O
26
ペトラルカという人はエロガッパだったようです。しかもそれだけでなく鼻持ちならぬインテリ。あと人間(の欲望)大ちゅき。過剰な言葉の洪水……この本はそんな本でした。しかし嫌いではない。真理の女神という絶世の美女が、自分と尊敬するアウグスティヌスとのやり取りの証人となって黙って見守っているという舞台設定も好きだし、彼がそんな彼女を議論と最中、ちらりちらりと見ると敢えて本人が説明しているのもボク好み。この三人、これがめっちゃキャラ立ちしてる!ただなあ……他人に読まれることを意識して自分を美化しているのがみえみえ!2025/03/18
スプーン
24
師と崇めるアウグスティヌスとの空想の対話を通して行われる自己問責。 しかし、暗く、真理少なし。2017/05/24
H2A
18
ペトラルカ本人フランチェスコと、歴史上の教父アウグスティヌスの対話。創作なのでもちろん歴史上の人物といえども彼の内面の対話である。そうしてみるとアウグスティヌスに語らせる批判はかなり手厳しい。思想的なところはおいても、永遠の女性ラウラについては容赦ない批判が浴びせられる。これはペトラルカ自身が味わった相剋が刻みつけられているのだろう。最後は名誉欲。そしてここでは当面の課題に取り組む姿勢を固持して見せ、アウグスティヌスに黙認させる。ラテン古代の詩句も鏤めて眩惑させるし素晴らしい読書だった。2019/12/03
さえきかずひこ
17
聖人アウグスティヌスとフランチェスコふたりの対話形式で進む書物で、全3巻構成。14世紀に書かれたもので、人間のありようをめぐっていい湯加減の回りくどい対話が続いてゆくが、これを退屈ととるか優雅ととるかは判断が難しい。とくに第3巻 愛と名誉欲の第三章「愛の治療法」(P.197〜) は著者ペトラルカの人物があふれ出ていて読みごたえがある。この章で扱われているのは愛というよりは、現代日本でいう恋にまつわる諸々の情念だが、彼の繊細さと多感さ、そして生真面目さがよく伝わってくる。翻訳は終始読みやすくて、素晴らしい。2019/05/25