内容説明
地下牢ふかく幽閉された孤独と呻吟の2年間をチェッリーニは超人的な生命力をもって耐えぬいた。そしてパリへと向かい、フランソワ一世の宮廷で新たな制作意欲に奮い立つ。しかし―。奔放不羈なおのれの人生を誰はばかることなくあけすけに語り、ゲーテ、スタンダールをも驚嘆させた自伝文学の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いとう・しんご singoito2
10
でも、全編にみなぎる王権や教権に対する強烈な批判や強烈すぎるほどの自己主張が人物造形に強烈な色彩感や立体感を与えているのはラサリーリョと同じと思いました。2025/02/04
ががが
4
16世紀のイタリアで生まれた彫金師、ベンヴェヌート・チェッリーニの半生を書いた自叙伝。古典芸術文化の復興運動中のヨーロッパで、自身の才能に絶対の自信もっていた男の波乱万丈の人生は、自伝とは思えないほどイベントに事欠かない。法王を始めとした権力者とのやりとりは当時のパトロンと芸術家の力関係が見られて興味深かったが、恭順さを保ちつつも畏れ多い発言を連発するので冷や汗をかく。牢にぶち込まれれば脱獄し、毒を盛られても復活する、まさに殺しても死なないこの豪傑は、天性とは何かをその生命力をもって訴えているかのよう。2025/04/22
Fumoh
3
下巻になると、少しずつこの本のテーマが分かってきたように思いました。チェッリーニはその侠気や職人気質ばかりが目立つような書き方をしていましたが、テーマはそこにはなく「芸術とパトロンとの関係」にあったのだと思います。チェッリーニは名高い彫刻「ペルセウス」を制作した後、パトロンとの関係性に悩み始めます。コジモ一世は急に彼を遠ざけ始め、重要な仕事をライバルたちに与え始めるのです。そのわけは…本作を読んだだけでは分かりませんが、いくつか理由があるとすれば、チェッリーニ自身の自尊心の高さといった性格的な問題、2025/03/27
Tsuyoshi
1
「侍の本懐とは、ナメられたら殺す!」の世界だった。カラヴァッジョの伝記集を読んだときにも思ったけれど、主人公たち自身はもちろん人並み外れて血の気が多いんだけど、周りの人だって多かれ少なかれそんな感じなのよね。2023/12/07