出版社内容情報
この作品は,ひたすら官能の世界に惑溺し,恋のもつれから遂には死にいたる一青年の姿を,愛欲と自我の葛藤を軸として描いたもので,ダヌンツィオ(1863‐1938)の世紀末的耽美主義の代表的小説である.官能的悦楽と陶酔の極致として死への憧憬をうたうが,個人主義的自我の限界も示している.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
茅野
2
初ダヌンツィオ。エロスとタナトスの駆け引きを描くイタリア文学。ロマン主義的なジョルジョの苦悩は実に文学的。結末は題通りなのだが、情欲と愛の象徴イッポリタに尊敬と死の象徴デメトリオが勝利するのは理想の顕れなのか、しかしそれは果たして美しいものだろうか?2019/04/28
猫丸
1
森田草平がかぶれたヤーツではなかったか? これ、意外に面白い。 愛する情人に対して耐えられぬ醜悪を見るところ。
KUMAGAI NAOCO
1
都会の喧騒を逃れて、アドリア海に面した田舎で隠遁生活を過ごす、ジョルジオとイポリッタ。蛾を追いかけまくったり、ピアノに喜んだりと、まるで子どものように無邪気なイポリッタ。なのに、ジョルジオは街の子どもが溺死したところに遭遇し、とある決意を心に秘めて、イポリッタを外へ連れ出す。最後の結末だけ見ると、イポリッタが可哀想な気もする。2014/09/28
Abyss
0
素晴らしいイタリア文学。ジョルジョとイッポリタの両方に共感し心に刺さった。「あ~分かりみ深い!」と終始思っていた。2020/06/24