出版社内容情報
本書は1348年ペスト流行の折,女7人男3人合計10人の1行がフィレンツェ郊外に病魔を避け,つれづれをなぐさめるべく語り合う物語を集録した体裁で,僧侶生活の裏面や恋愛の実相を描き,大胆な人間解放の躍動が感ぜられる.イギリスの「カンタベリー物語」やフランスの「エプタメロン」などに大きな影響を与えたボッカチオ(1313‐1375)の代表作.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
46
6巻の話の中では、10日目第三話の、仁徳者ナタンの話が際立っている。ボッカチオは、宗教家たちの勿体ぶった言葉では生々しい生きた人間の生活を描くことはできないと考えていた。そこでこの作品が生まれたのだが、ボッカチオ自身の創作は少なく、百話のうちのほとんどは当時流布していた伝承や物語から取ったもので、『千夜一夜物語』から取ってこられた話も多いという。『デカメロン』は、その内容よりも、時代に先駆けてこういった作品が出されたということが意義深い作品なのだと思う 2016/01/19
まふ
0
所謂十日物語。6冊1000円で売っていたものを買って読んだ。大体において男と女の物語が多い。ほとんどが今で言う「不倫」。しかもそれを極めて肯定的に綴っているのが、何とも新鮮な感じがする。結構露骨な描写もあり、当時の書物としては画期的な性質のものであったろうことが窺い知れる。ただ、最後の物語(100話目)は、流石にこの作者はツボを心得ており、涙があふれてくるほどの気高い物語であった。古典として不滅の光を放っていることがよく分かる作品である。2004/08/12