出版社内容情報
本書は1348年ペスト流行の折,女7人男3人合計10人の1行がフィレンツェ郊外に病魔を避け,つれづれをなぐさめるべく語り合う物語を集録した体裁で,僧侶生活の裏面や恋愛の実相を描き,大胆な人間解放の躍動が感ぜられる.イギリスの「カンタベリー物語」やフランスの「エプタメロン」などに大きな影響を与えたボッカチオ(1313‐1375)の代表作.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
48
「不幸な出来事のあと幸福になる恋人」というテーマの5日目。第八話は、百話の中でも最も有名な話の一つ。この中で地獄の様相を呈するキアッシは『神曲』煉獄篇で地上の楽園として描かれた森だというから、ボッカチオのダンテに対する対抗意識の激しさには驚かされるばかりだ。九話は、O・ヘンリーの『賢者の贈り物』を彷彿させる話。「口車に乗らないで難を逃れる」というテーマの6日目はどの話も短く警句のようだが、その中でも八話の文句ばかり言う姪を「不快な人を見るのが嫌なら鏡に自分の顔を映すな」とたしなめた話にどきっとさせられた。2016/01/18