出版社内容情報
母親の強いる富裕な青年との結婚を拒んだヴェーラは,医学生ロプーホフを夫に選び家を出る.自分と同様に貧しい女性を助けるために裁縫店を開いた彼女に新しい恋が芽生える.婦人の解放,恋愛と結婚,共同労働の組織,不幸な人々の救済と教育の問題などの解決を求める「新しい人々」の姿を描く,ロシア文学最初の社会主義的空想小説.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Yuma Usui
25
1860年代に書かれたロシアのユートピア小説。レーニンに深く影響を与えたとのことで興味が湧き読んでみたが思っていたより堅苦しくなく読みやすい内容だった。上巻では自由や自律、友情や愛情について考えさせられるエピソードが多い。裁縫工場の経営により得られた利益の分配や用途には感心させられた。主人公たちが男女ともに聡明で誠実な人柄で安心して読み進められたが、上巻終盤に近づくにつれ不穏な記述が増えてきて、、下巻が気になる内容。2020/06/09
とまと
5
今まで私が読んだロシア文学(微々たるものだが)の中では目新しいもの。性の観点からのみでいっても、私は性欲=罪とするトルストイから入ったから尚更かも。先に『ロシア文学案内』でこの作品が書かれた経緯と作者のことをちらっと知っていたから最後まで読めた。予備知識なしで読んだら挫折してたかも。ロプホープとヴェーラの結婚後、ロプホープがヴェーラの母親と話をつける様にはほれぼれ。/●●(国名)人と一括りにしてある記述には今後も興味深々。/社会主義、唯物論、ロシアの歴史、何に関しても無知な自分を更に突きつけられたのよん。2012/07/21
kogyo_diamond
4
建築史家の本田晃子さんが社会主義住宅に関するイベントで本書を引用されていた。レーニンらボリシェヴィキの革命家たちはこの小説をモデルに社会主義的な住宅を構想したと言う。思いのほか啓蒙の書らしく平易な文章。作家が読者に語りがけながら進行するスタイル。所有の否定・家族解体を掲げる為か、母親の強欲ぶりと暴力性が強烈に描かれるが、全ては環境がなせる業なのだと何度も解釈が入る。夫婦別室就寝。ヴァージニア・ウルフ『自分ひとりの部屋』を思い出す。主人公の「あなた」「あんた」の使い分けが気になった。さて下巻はいかに2024/04/13
荒野の狼
4
本作はレーニンが5度も読み、内容の一行一行を記憶しているほどの作品であるのでレーニンのモチベーションとなった思想・理想の原点を考察するときは欠かせない。 本作で普遍的価値があるのは、人はどうあるべきか、男女の本当の愛とはどのようであるべきか、人を自分本来の思想に導くときにどういう姿勢であるべきか、という主義に関係なく根本的な思想が書かれてあること。 本作は後年の発見により草稿の誤りの訂正などが何度か行われたが、本訳書は1975年版をテキストにしているp8. 2019/01/27
Terry Knoll
4
帝政ロシア時代(1862年)に書かれたユートピア小説。 女性が自分の意思で結婚相手を選び会社を経営し、従業員と利益を分け合える。 現在では当たり前のことばかりです。 帝国時代の世相から見ると理想郷の生活だったのでしょうね。2015/06/29