出版社内容情報
息子への愛だけを生きがいに,何事にもびくびくして無知と忍従の生活を送っていたニーロヴナ.しかし彼女は次第にめざめ,革命家へと成長してゆく.この主人公を軸とし,社会の重圧をはねのけて立ちあがる新しい群像を描いたこの作品は,ロシア革命前夜の苦悩をリアルにとらえるとともにその理想を今に伝え,なお人々の心を打つ.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
366
社会主義リアリズム小説の嚆矢ともいうべき作品。1902年の社会民主党員による労働争議を描く。これがやがてはロシア革命に繋がってゆくのだが、ここはでまだその前哨戦ともいうべき段階で、上巻ではメーデーを頂点に運動の高まりを跡付けてゆく。中心となるのはパーヴェル等の工場労働者だが、ナターシャやサーシャといった地主階級の社会主義者も描かれる。本書を最も特徴づけているのは、パーヴェルの母ペラゲーヤの存在であり、彼女の母としての素朴な愛と不当な圧政に対する覚醒とが物語の両輪となって展開してゆくものと思われる。 2021/10/14
ケイ
96
母への思慕…ではなかった。ゴーリキー版「ジェルミナル」か、いや、社会主義革命的にいえばこちらが本場。工場で働けど働けど、暮らしは楽にならず。休日を1日挟んでも疲れは蓄積していく。憂さ晴らしはウォッカ、喧嘩。若い工場夫パーヴェルは、革命思想にめざめ、友人たちを招いて勉強会を自宅で開くことにする。不安に思いながらも見守る母。しかし、憲兵には目をつけられ、何人かは引き立てられていく。彼女は、革命家たちみんなの母となっていくようだ。2017/03/05
cockroach's garten
20
社会主義リアリズムを提唱したゴーリキー。彼の考えは後のプロレタリア文学に大きな影響を与えた。今作は彼の代表作の一つである。貧しい労働者の家庭で横暴な夫が暴力をふるいその息子も夫が亡くなった後はそこらの労働者と変わらず、飲んだくれては粗暴に振舞う始末。だが息子はしばらくしたら人が変わったようにお酒を止めて、母親を労わるようになる。やがて彼は社会の矛盾を正そうと仲間と共に活動していく。無知ながらも息子の活動を見守る母親の姿と邁進する彼らの姿はハラハラして面白かった2019/12/29
あっきー
14
⭐2 桑原世界近代小説五十選39冊目、母親と二人暮らしの息子が左翼活動の仲間大勢を家につれてきて勉強会をやりだした、上巻の最後になってやっとこさ話が盛り上がってきたが、これが五十選でなかったら上巻までで止めるところだ、60年前に発売の文庫本で図書館で探すのも難しかったくらいで今となっては人気も薄かな2023/10/12
takeakisky
1
ペラゲーヤ・ニーロヴナの目から見る労働者の社会主義運動。無学文盲の田舎の母の眼差しを透すとすべてにほのぼのとした霞がかかる気がするが、もしかすると本当のありのままはこっちなのではないかという気分になる。子供の好むものを横で見ているうちに覚えるというのは、よくあること。その上、知ると好きになり、だんだん自分でも手を出して。そうなると、さらに好きになり。好きになれば、学び。現実味に溢れ、かつ微笑ましい。そんな母に歩調を合わせて読み手も無理のないスピードで運動の感覚を理解する。前半のクライマックスはメイデイだ。2024/07/21
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