出版社内容情報
十九世紀中葉のロシアの作家アクサーコフ(一七九一―一八五九)が豊かな体験を生かして書いた川釣りの物語.著者が釣り糸をたれた河や湖のたたずまい,魚たちの生態が四季の移り行きを背景に活き活きと描かれており,叙述はおのずから一種の散文詩をなしている.同時代の批評家は本書の刊行を「ロシア文学上の一事件」とまで激賞した.
内容説明
19世紀中葉のロシアの作家アクサーコフ(1791‐1859)が豊かな体験を生かして書いた川釣りの物語。著者が釣り糸をたれた河や湖のたたずまい、魚たちの生態が四季の移り行きを背景に活き活きと描かれており、叙述はおのずから一種の散文詩をなしている。同時代の批評家は本書の刊行を「ロシア文学上の一事件」とまで激賞した。
目次
釣り竿のはじまり
竿
釣り糸
浮子
おもり
釣り鉤
はりす
釣り竿の構造
餌
釣り場所の選定について
寄せ餌
釣りの技術について
魚一般について(ロショーク;ヴェルホフカ;泥鰌 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
62
ロシア人の釣り好きによるロシアの釣り好きのための本。竿、鉤、餌といった装備から始まって、どの魚がどんな場所・餌を好むのかなどを綴ってゆく形式。最初に著者も断っているとおり、それはロシアとは気候や魚種の違う場所では全く役立たない知識なのですが、不思議に風趣に富んだものに触れたような気持ちになってしまいます。多分それは、この本が著者の「ずっとむかしの甘い」思い出、そしてその背景となるロシアの煌く自然と繋がっているから。釣りの「記録」に絡まった彼の「黄金の時」、その「生き生きした回想」を胸いっぱい楽しみました。2019/09/20
Koning
25
ボルガ川やらモスクワ河(だと思う)なんかでの釣りについての紀行と魚の生態やらなんやらという19世紀のロシアの釣り好き作家の随筆なんだが、以外と近縁種だとはいえ似たような魚がいて(ついでに陸封されてないサクラマスなんかも)なかなかにお馴染みな感じ。なにせ大陸国だけに基本川釣りなのだがそこがいい。というかマニアにものを書かせるとこうなるという好例やもしれない(笑)。今もロシアのおっさんがモスクワ川の橋の上で釣り糸を垂らしてる光景はよく写真で見るけれど、精神的先祖ですな2015/07/12
Kouro-hou
23
エゲレスやフランスでは釣りが文学ジャンルとして確立してるのに何故ロシアには無いのか?訳書もあまりないし、というかフランスの釣り事情はロシアと全然違うんだよ!ピーン!わしが書けばいいんじゃね?と著者56歳にして書いた19世紀の川釣り随筆。ロシアの地方貴族で早々に仕事を引退して悠々自適&文学サロンなんか開いていたそうで、コレもゴーゴリの勧めで書き始めたとか。釣り道具から釣り場、釣り餌、お魚についてマニアならではの熱意と誠実さの込められた実用随筆であり、楽しかった思い出や田園風景が滲み出てくる良書でもあります。2016/05/22
misui
10
150年以上前のロシアの実用書で、とりたてて言うほど面白いわけではないが、趣味家が熱をこめて書いたことに意義がある。その熱量ゆえに微に入り細を穿って描かれた釣りの風景やテクニックは、もしかすると今でも通用するかもしれない。釣り好きの人にはもちろん、釣りをしない人間にも楽しさが伝わってくる本だった。2013/01/27
オオトリちゃん
6
四季折々の変化を肌で感じながら、美しい川辺や湖で静かに釣り糸を垂らす。都会の喧騒から離れて心安らぐひとときを満喫……なんてのんびり風流な気分に浸ってる場合ではありません。宇宙が見えてきてしまいますたよ。日常から離れすぎて癒しのレベルをとうに超えてます。釣竿から始まり、餌選び、場所探し、そして魚の生態研究。何でも一つのジャンルを細かく突き詰めていけば、そこに宇宙が如き無限の奥深さが現れるという事でしょうか。釣りの話なのに、宇宙の秘密を解き明かすかの様な深遠な思索にふれてしまい、もう魂が打ち震える思いです。2015/12/20