出版社内容情報
本書は,ロシア軍艦「パルラダ」号の提督秘書となった作家ゴンチャロフの世界周航記の一部,ことに日本に関係ある部分を抄訳したもの.香港,上海,琉球諸島,小笠原等の風俗,幕末日本の政情や日本人の慣習を鋭く観察しているが,弱小国日本への優越感と,故国への郷愁とのからみ合いが基調となっている興味深い紀行文である.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たつや
19
1853年の数ヵ月、ロシアノの作家、ゴンチャーロフが日本に渡航した際の記録です。面白かった、2016/07/02
金吾
14
ゴンチャロフの観察眼や時々きれている描写は素晴らしいものがあり、当時の様子が偲ばれます。ただ日本人としては官僚の鈍感から来る不甲斐なさは残念です。2021/11/12
春ドーナツ
12
読んだ本の題名も、作者名も忘れてしまった場合、かの作家の他の書物も読んでみたいとき、どうしたらよいのだろう。先日ドストエフスキーの「地下室の手記」を読んでいたら、出てきたゴンチャロフ!『オブローモフ』に感銘を受けたのだった。その内「断崖」(全5冊)を読もうと思っていたのに絶版になっていた。投稿するにあたって事前調査(Google検索)したら神戸の「ゴンチャロフ製菓」関連しかヒットしない。ああ、過ぎ去りし年月。1941年に翻訳された本書は改版して欲しかった。「渡航」がミソ。「滞在」ではない。黒船ペリーの反省2025/02/26
isao_key
6
ゴンチャロフが全権使節であるプチャーチンの秘書として旗船パルラダ号に乗り、長崎に来航したのはペリーから遅れることわずか1ヵ月半の1853年7月22日だった。解説にニコライ1世がプチャーチンを日本に派遣したのは、ペリーを日本に送る議案がアメリカ議会を通過したとの情報を得たためだとある。この時代でもロシアの情報収集能力の高さには目を見張る。ゴンチャロフが同行したのは大蔵省勤務17年の実務経験があり、外国語に堪能で文章も上手だからであった。作家だけあり、常人の関心が向かない服装の色にまでついて述べ褒めている。2013/07/31
100名山
3
既にラスクマン、レザノフ、ゴローニンと読んでいたので現在も続く日本の官僚体質に飽き飽きしていたので読み進めるのに苦労しました。ゴンチャロフがオブローモフ書く前の作品ですが、時々優れた描写が出現するのが慰めでした。「日本幽囚記」の翻訳者である井上満の翻訳は古く旧漢字です。日ソ中立条約締結後2日目の出版ですね。仕上げに川路 聖謨の長崎日記を読まなくてはいけないかな。現代語に直してあるかしら。2019/06/27