出版社内容情報
詐欺師チチコフは戸籍面では生きていることになっている死んだ農奴を買いあつめて,これを抵当にして銀行から金を引出すため,ロシア各地を遍歴する.作者はこの遍歴のなかで,随所に道徳的破綻者を発見し,それに対して鋭い社会的解剖を加え,腐敗したロシアの全貌と,その生活につつまれた「夢」とを白日の下に暴露して,誤った社会制度と国家組織に痛烈な批判を下す.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
171
1830年代のロシアを描いたこの作品、 魂=農奴 らしいが、ロシアの当時の風景が 風刺的に 描かれていく。 未完なのが、残念だが、チチコフの憂国の 想いは ぼんやりと 伝わってくる気がする。 帝政ロシアの腐敗と退廃が 地味に 伝わる、そんな本だった。2018/04/19
ケイ
120
なるほど、これはゴーゴリの憂国であるのだな。汚職にまみれ、正直ではなく、自分ばかり得をしようとする輩が多すぎる。地主は強欲で、農奴はすきあらば目を盗んでサボろうとする。役人は袖の下を要求し、あちこちで不正がまかり通る。それを逆手にとってチチコフに彼らを試させたのだろう。未完とは言え、彼の思想が痛いほど伝わってきた。2016/01/12
扉のこちら側
79
2016年770冊め。【211-3/G1000】第二部ということだからか、上巻中巻とは雰囲気が変わってくる。タイトル『Мёртвые души』のдушиには「魂」の他に「農奴」という意味があるそうだが、死んだ農奴を扱いながらその復活を魂の本質として描こうとしたわけなのだろうか。まったく、暖炉に投げ込まれた原稿が惜しい、未完の名作である。3巻通してだと、上巻第6章が好き。2016/09/29
かごむし
26
未完でもあり、現存する草稿を編集したものと言われる第二部。読むのは正直迷ったのだが、結果として、読んでよかった。農民たちを指導する地主が、労働の喜びを語る場面や、ある人が富とか名誉よりも神に仕える幸せを語る場面など、ロシアが目指すべき理想の道がここにあるのだというゴーゴリの熱い思いが伝わる。作品をロシアの理想論と読むと、議論が青くさすぎて、作品が完成してもどこにもたどり着けなかったと思うが、作品に描かれた人間の姿の中に、普遍的な多くのものを感じた。他のロシア文学を読むときに道しるべとなる作品の予感がする。2019/01/26
Tomoko.H
20
ゴーゴリさん、せっかく書いた原稿燃やさなくたって良かったのに。抜け落ちた部分に、終盤で言及されている事件があるのだろうと想像で補足しつつ読んだ。相変わらず「ロシア人というやつは…」でしきりにくさしながらも、その言葉からにじみ出る愛が人気の秘密なのかなと思う。未完なのが残念。2016/09/10