出版社内容情報
詐欺師チチコフは戸籍面では生きていることになっている死んだ農奴を買いあつめて,これを抵当にして銀行から金を引出すため,ロシア各地を遍歴する.作者はこの遍歴のなかで,随所に道徳的破綻者を発見し,それに対して鋭い社会的解剖を加え,腐敗したロシアの全貌と,その生活につつまれた「夢」とを白日の下に暴露して,誤った社会制度と国家組織に痛烈な批判を下す.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
186
主人公チチコフの生き様を通して、 19世紀 帝政ロシアの腐敗ぶりを描く。 ひたすら死んだ農奴を買い集めるチチコフの 意図は何なのか? 奇妙な申し出に対する 地主たちの 多様な 反応が面白い。上巻は これから 始まる 何かへの 序章の印象だった。2018/04/16
扉のこちら側
107
2016年763冊め。【211-1/G1000】図書館にあるいくつかの全集で冒頭数ページの訳を見比べ、最終的に青空文庫で確認したこの岩波文庫版で読むことを決めた。しかし青空文庫ではこの上巻しかまだ読めないので、書店取り寄せで3巻揃えてようやく着手。ロシアにて、死亡した農奴の人頭税を数年は支払わなければならなかった時代に、詐欺師チチコフが何かをたくらみ、全国を回って死亡した農奴を買い集めている。慇懃な立ち振る舞いと手練手管でどうだまくらかしていくのか。中巻へ。2016/09/27
SIGERU
24
『死せる魂』の背景となる18世紀前半のロシアでは、前近代的な農奴制が敷かれていた。農奴は、ただ使役されて年貢を納めるだけの存在。土地と同じく、地主の所有物に過ぎなかった。したがって移動の自由は一切認められず、貧窮に耐えかねて逃亡すれば無期限に捜索され、捕縛されたという。主人公チチコフは詐欺師。田舎をめぐり、地主たちから「死せる魂(既に死んでしまった農奴)」の所有権を安値で買い取って歩く。理由はまだ明示されないが、どうやら死んだ農奴の所有権をかたに、借金詐欺を企んでいるらしい。滑稽なのに悒鬱きわまる設定だ。2021/05/05
松風
24
ピカレスク?寄り道や脱線が面白い。先は長いし未完らしいが、だらだら付き合える作品。2014/10/10
かごむし
23
全3巻。やってしまったなあ。と思うのは、表紙の数行でネタバレしているのを不意に読んでしまったから。不気味なぬらぬらとした話の筋の運び方だから余計にもったいないなあと思った。ゴーゴリを読むのは4作品目で、結局何が言いたいのかつかめなくて、自分には少し合わない作家かなあと思っていたけれど、この作品はとても面白い。作中で何度もロシア的と強調される、ある種の誇張された人物がたくさん登場するのだけど、その人たちとのやりとりの軽妙さと、いかにもいそうだなあというリアリティに引き込まれて、どんどん読んでしまう。2019/01/07