出版社内容情報
ゴドゥノフ朝滅亡をはかるモスクワ貴族階級と偽の皇子を推戴する士族階級とが対立する十七世紀初めのロシアの「動乱時代」を鮮やかに描く史劇.プーシキン(一七九九‐一八三七)は,作中人物を通して,ゴドゥノフ朝滅亡の陰に人民の輿論を見,根底に封建制度の崩壊を見い出す.ロシア国民劇に新しい面を切り拓いた野心作.一八七○年初演.
内容説明
ゴドゥノフ朝滅亡をはかるモスクワ貴族階級と偽の皇子を推戴する士族階級とが対立する17世紀初めのロシアの「動乱時代」を鮮やかに描いた史劇。プーシキン(1799‐1837)は、作中人物を通して、ゴドゥノフ朝滅亡の陰に人民の輿論を見、その輿論の根底に封建制度の崩壊を見いだす。ロシア国民劇に新しい面を切り拓いた野心作。1870年初演。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
333
ボリス・ゴドゥノフはロシアの国民的英雄かと思っていたのだが、そうではないようだ。そもそも彼自身が僭称皇帝であり、劇ではそこにさらに僭称者が現れるという構造だ。史劇としてはわからなくもないが、そもそも劇であるためには、それぞれの場面が細分化され過ぎているために、ドラマティックであるよりも、叙事詩的な趣きになっている。終曲もまた劇的からは遠いように思う。ロシア国民劇といわれれば、それはそれでわからなくもないのだが。19世紀末にあって、新しい時代を待望するプーシキンの熱意は感じるが。2018/01/31
k5
40
万人向けでないことは分かってますけど、万人に読んで欲しい名作。イヴァン雷帝の子ドミトリーを暗殺し、帝位についたボリス。しかし、ドミトリーを僭称する修道僧グリゴーリイを亡命貴族やポーランドが支持したことから、政権が揺らぐ。。。人気のないロシア史の、しかもややこしい動乱時代がモチーフなので、ほとんど知らない人ばかりと思いますが、まあ安倍さんが失脚して菅さんが天下とったけど、何故か立憲の人が自民党正統を訴えて中国もそれを支援、と思えばいいかもです。シュイスキイの強かさ含め、全篇にあふれるロシア的皮肉が最高です。2020/05/23
藤月はな(灯れ松明の火)
40
とある王朝の滅亡を描いた戯曲。ここで描かれる国政を改善するよりも中身のない偶像で大衆を曳き付けようとする士族、政治上の立場を強硬なものにしようとする貴族、責任を負う覚悟もない民衆の「その場限り」に飛びつく衆愚さ、宗教すらも代弁として使う一種の浅ましさがある。そしてそれは歴史を振り返って過去にしたとしても、現在のこの日本でも今も尚、通じる所があるのが悍ましいのだ。2014/04/21
松本直哉
26
ムソルグスキーのオペラにおける群衆の圧倒的な存在感からも察せられるとおり、この作品の主人公は群衆、為政者(前任も後任もうさんくさい)が交替すればとりあえず歓呼して平伏するが、結局は何ひとつ変らないことを知っていて、けれども識字率の低さゆえに、代読されたメッセージを信じ込んでしまう群衆。この劇が長く上演禁止だった理由はよくわかる。誰が為政者でも同じと言われれば皇帝の立つ瀬がなくなる。しかしこの実感は、今のこの国の我々も共有していないだろうか。選挙して、政権が替って、それでいったい何が変っただろうか。2022/02/02
赤とんぼ
19
ロシアの歴史を知らないとわからないなあと反省。もう一度ロシアの歴史読んでから再読予定。2017/08/21
-
- 電子書籍
- 理想の娘なら世界最強でも可愛がってくれ…
-
- 和書
- 箱館戦争のすべて