出版社内容情報
クーデタに始まる第二帝政、きら星のような文人たちの野心と葛藤、死と死がすれちがうパリ・コミューヌの日常など、19世紀後半の「世界の首都」パリを記録した光彩陸離たる観測記。上巻は1851年から75年まで。
内容説明
兄エドモン(1822‐96)、弟ジュール(1830‐70)―。フランス最高の文学賞に名をのこすゴンクール兄弟による、19世紀後半の“世界の首都”パリの世相風俗を克明に記録した光彩陸離たる観測記。クーデターに始まる第二帝政、死と死がすれちがうパリ・コミューヌの日常など、上巻には1851年から75年までを収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
46
ようやく読み終わりました。ずっと積読状態でしたが、読み始めると、当時のフランスのパリの様子や様々な作家などのゴシップが話し言葉で書かれているので読みやすい気がしました。19世紀後半のフランスの世情がよくわかりそれだけでも資料としての価値もあるという気がします。2015/01/08
踊る猫
40
フローベールやサント=ブーヴなど、フランスの風俗を知っていれば楽しめる本。裏返せばそれだけこちらに教養がないと楽しめない本。とはいえ、日記なので(毎日つけられるわけではなく、飛び飛びなのだけれど)『断腸亭日乗』にも似た読み応えあり。今も昔も下ネタで笑いを取ろうという人は居たのだなとか、フローベールの天才性は頭抜けていたのだなとか、戦火を潜り抜けたゴンクール兄弟(上巻で弟は亡くなり、兄だけになるのだけれど)がなにを見てなにを体験したのかとかがつぶさに語られる。このノリ、かなり好み。下巻も楽しみに読むつもりだ2019/01/31
やまはるか
21
600頁を退屈せず読んだ。「失われた時を求めて」に近い空気感、この一年で一、二に値する読書だった。22年間に2回だけ24時間別々にいた外は兄弟一緒で愛人まで共有し、40歳で弟のジュールが亡くなるまでは「わたしたち」と複数形で書いている。二人が身を置いたパリ社交界の晩餐会、フロベール、ゾラ、ツネゲーネフ、サント・ブーヴなどの会話、自由で多様な恋愛、「ナポレオンは自分の固い糞を指のなかで丸めてだんごにする癖があった」などという話まで出て来る。梅毒に脳を侵された弟の臨終と埋葬の場面は感動的だった。2025/02/16
ラウリスタ~
18
プルーストの社交界でも「うんち」が好評を博するように、サンド夫人のサロンでもおならで成功を収めた人がいたとか。男だけの場になると途端に娼婦の話。ゴーチエとかデュマ父みたいなちょっと前の世代の豪放磊落ぶりとか、「僕たちの弟子」扱いされるゾラの神経質ぶり(ゴンクールはそう思ったんだろう)とか、語られる側以上に、ゴンクールが何を良しとしていたのかってのが反映された人物評。サント=ブーヴが枝葉末節とかゴシップにこだわるバカみたいで、フロベールはつねに彼の意見に反対する。彼らの作品をよく読んでいれば楽しめるたぐい本2017/06/14
きりぱい
17
ゴンクール賞というのは聴いたことがあるけれど、その名を残したゴンクール兄弟が何を書いたかというとよく知らない。8つ離れた兄弟エドモンとジュール。二人が綴る日常には、フロベール、バルザック、デュマ、ユゴー、ゾラ、他にもぞろぞろと、19世紀の傑出した作家たちが普通に出てくる!特にフロベールとのつるみ率高し!後に世に出る作品の執筆の経過がうかがえるかと思えば、恋ばながあったり、女性観があったり、作品や人物を評したり、遠慮のない書きぶりに作家たちの素顔が見えて興味深い。年度ごとの中扉にある写真も楽しい。2011/10/14