出版社内容情報
これは当時20代のフランス青年に贈られた,科学の絶対性の崩壊を主張した書.恋愛の研究に科学的実験を試みる場合に発生する悲劇を描き,学問対社会の問題を提示した小説で,時代の改革を希求する作家としての責任が全体を貫き,著者の思想の転換を示す1889年の作.19世紀末フランスの文芸史においても画期的な名作.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
10
「弟子」は卑劣なことをした。人間の屑だと言われても仕方がないことをした。だが、彼はまた悔悟の念を感じている。それなのに先生の学説が自分の行ったことを正当化してくれることを期待している。先生は何が言えるか。彼は「責任」というものを否定してる。恋は性欲だと教えた。善悪などというものは慣習に過ぎないとも教えた。弟子を励ますことは卑劣を肯定することである。だが詰責すれば学説を翻すことになる。この情けない知識人の師弟に貴族であり軍人である兄が対置される。不都合な真実を告げた上で、自らの手で裁きを下す男らしい兄が。2022/02/06
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