出版社内容情報
スペイン人による「新世界」アメリカ侵略を告発したラス・カサス神父と狂信によって人間性を失ったキリスト教徒との対立・葛藤を中心に,壮大なスケールで描くインカ帝国滅亡の物語.狂信が宗教の名において犯した罪を告発するマルモンテル(一七二三―九九)のこの小説はヨーロッパ精神史の中の最も優れた成果の一. (解説 中川久定)
内容説明
スペイン人による「新世界」アメリカ侵略を告発したラス・カサス神父と狂信によって人間性を失ったキリスト教徒との対立・葛藤を中心に、壮大なスケールで描いたインカ帝国滅亡の物語。狂信が宗教の名において犯した罪を告発するマルモンテルの小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
13
1777年初出。 著者は貧しい仕立て屋に生れた(解説中川久定363頁)。 インカとは、13Cマンコ=カパク以来4C続いたペルーの統治者を指す(375頁)。 人間にはただ二種類の、狂信の奴隷かその犠牲者とかいう区別があるだけ(22頁)。 ラス・カサスはコンキスタドール、新大陸の征服者に対して、ティラーノ(暴虐者) という呼称を用いた(31頁)。 征服された側からの視点は極めて重要。 気質の穏やかな民は、怠惰で強欲な人間たちの犠牲となり、奴隷状態に追い込まれ、 苛酷きわまりない労働を強いられた(33頁)。 2014/03/30
中島直人
4
インカ帝国滅亡を背景として描かれる、偏執的なカトリック狂信者に対する批判。フランス革命期の社会背景、空気が感じられる。2014/05/04
belier
2
ピサロが好人物に描いてあって違和感を覚えたが、その狙いは同行している狂信的なカトリック神父を際立たせるためだった。著者は18世紀の百科全書派で、同時代の教会に強い不信感を持っていたようだ。例外的な神父ラス・カサスの寛容さはルネサンス期のユマニストに通じ、忠義深いインカの戦士は中世の騎士道物語の投影ではないかと思われた。ピサロや、インカに味方する架空のスペイン人アロンソが天体にも詳しくて、まるで18世紀の知識人のようだった。一応歴史小説だが作意が見え見えなのだ。現代では評価されないと思うが楽しくは読めた。2024/11/10
たこ焼き
1
「富にはふさわしい用い方というものがある。我々がいきるために必要な分を取り除いた残りは、もはや我々の富ではない。それは孤児や体不自由な人のものになる。」「でもそんな風にご自分の富を手放してしまっては、みすみす民衆の尊敬を受け損なうのでは?」「豪華さや気前の良さが無垢な生活の簡素さと同じ程世の尊敬を獲得する物かどうかはわからない。だが多分それゆえにこそ一層、われわれは富を手放すのだ。なぜなら富によって人に愛され敬われる心地よさを知った者は、おそらく徳によって我が身を飾ることをやめるからである。」2016/11/02
のほほんなかえるさん
1
人は何を信じ、何のために戦い、生きるのか。「人は信じたいものを信じる」とは誰の言葉だったか。人間の信念の激突。実に劇的である。ピーター・シェファーの「ザ・ロイヤル・ハント・オブ・ザ・サン」との比較で読んでみるのも一興ではないだろうか。2011/11/08
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