出版社内容情報
第一次世界大戦前後のヨーロッパ,そこに生き,苦悩し,新しい光を求めてすすんでゆく一人の女性アンネットの愛と自由を描くロマン・ロラン(一八六六―一九四四)の大河小説.異母妹シルヴィ,息子マルクとの関係を軸に,社会・政治・恋愛等の問題が語られ,現代の女性の生き方にも示唆を与える不朽の名作.『ジャン・クリストフ』の姉妹篇.
内容説明
アンネットは一新聞社の社長秘書となり資本主義下の政治・経済社会の虚偽を知るが、マルクは母親の仕事に反感を持ち一時遠ざかる。亡命ロシア人の娘アーシャと結婚したマルクは、ふとした妻の過ちから別居したものの、再び強く結ばれ、反ファシズム活動へ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
km
22
「彼女には道徳的又は宗教的な松葉杖の必要はなかった。誇りをもった静かな女の眼があった。その眼はまばたきしなかった。彼女自身にも、またその慧眼に見抜かれた相手にも詐りを言わなかった。そして彼女は幻をもっていないので、陽気なその堅固さは少しも変わらなかった。彼女は生きることを愛した。」「人生の危険や浮き沈みに対して戸を閉ざして、その時計仕掛が展開して行く「観念」の天国以外には、精神の自由というものは存じない。もちろん、彼らは人生からは解放されている、死んでいるのだから。」行動を伴わない思想に価値は無い2018/05/26
アリョーシャ
2
「行動だ!」という叫びはいかにもロマン・ロランらしいが、むしろうじうじして揺れ動くマルクに共感する。個人的な体験と重なる部分もあり、なるほどと思いながら読んだ部分も多い。憧れはするが、こんなに情熱的な生活を送っていたら、骨まで焼き尽くされてしまうだろうよ。2017/08/26
しんすけ
2
物語はいよいよ佳境に迫ったようである。ただ、再び深刻な内面分析の羅列が始まり、現代人には敬遠されかねない物語になってしまったようでもある。反戦平和活動が祟ったのか。アンネットはどの職業につくこともできなくなってしまっていた。また、マルクも学生運動に身を投じたため、まともなアルバイトも得られなくなってしまった。アンネットは新聞社の社長の気に入られ秘書の職を得る。それは社長が成上がり者だったことが幸いしたのだった。社長に同行してアンネットがイギリスに滞在していた間に、マルクは過労で倒れてしまう。2016/08/28