出版社内容情報
ほたる-草に宿った月の光のひとしずく! 故郷シトリー村での体験をもとに,鋭い観察眼と簡潔・的確な表現で動物たちの生態をいきいきと描きだした軽妙な短文集.原文の凝縮された文体や巧みな比喩がみごとに生かされた訳文とロートレックの挿絵で,ジュール・ルナール(1864-1910)の独特な世界を心ゆくまでたのしめる1冊.
内容説明
ほたる―草に宿った月のひとしずく!故郷シトリー村での体験をもとに、鋭い観察眼と簡潔・的確な表現で動物たちの生態をいきいきと描きだした軽妙な短文集。原文の凝縮された文体や巧みな比喩がみごとに生かされた訳文とロートレックの挿絵で、ジュール・ルナール独特の世界を心ゆくまでたのしめる1冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あきあかね
24
田園での暮らしの中で出会った種々の動物や草花、虫たちを綿密に観察し、特徴やくせを的確に捉えている。鳴き声を用いた軽妙な言葉遊びや巧みな比喩等も交え、それぞれの姿を活写する。久しぶりに読み返して思ったのは、意外と長い文章が多いこと。長文から滲み出る動物や自然への愛情も魅力的だが、余分なものを落としきった、凝縮された短文の詩情やユーモアも素晴らしい。人と自然とがまだ寄り添って生きていた、19世紀後半のフランスの小さな村の草の匂いと穏やかな光が感じられる。⇒2021/01/12
藤月はな(灯れ松明の火)
24
「にんじん」の作者とロートレックの素描で贈る身近な「博物誌」。雄鶏や猫の性質が的確に表現されており、さらにグリム童話やことわざに因んだユーモアあふれる遊びを含む文章によって構成されている。動物たちを見る視点がぐっと間近になるような大人も子供も楽しめるだろう最初の「博物誌」。2012/10/04
マッキー
14
自然の生き物の様子を詩的な文章でつづっている。遊びっぽい書き方や比喩、ことわざのようなものも交えて書かれているので読んでて楽しい。また正確でリアリティのある挿絵も本作に彩を添えている。難しい本とかを読んでいるときの息抜きにおすすめかも。2015/09/18
おりすと
12
『博物誌』という堅そうな題名とは相反して、とても読みやすい詩集。読み始めるとまず一遍一遍が短いことに驚きました。「へび」の編などは「長すぎる。」の一言だけで第一部が終了。しかしこれはルナール独自のスタイルだったようで、版を重ねるごとに削られ、短くなっていった文章には洗練された雰囲気すら感じます。(「一晩中、月の命令で、封印をそこら中に貼り付ける。(くも)」など) 子供の目線のように瑞々しく、それでいて語彙豊かな動植物の描写は、読んでいると自然に畑や森に囲まれた山村を想起させてくれます。2013/12/17
みけのすずね
11
身近な家畜たち、動物や虫、植物などを観察したり思い描いたりして書かれた短文集。りすのしっぽを羽飾りと言ったり、ばったを虫仲間の憲兵といったり、ちょうを花の所番地をさがしているふたつ折りのラブレターといったりするかわいらしい感性がみえるところと、家畜の世話や鳥の狩りのような生活の営みに則したところとが同居していた。こういう目線は落ち着きます。注釈を読むと、フランス語の洒落なんかもけっこうきいているんだなあ。2015/02/27