出版社内容情報
鋭い観察力に支えられた,的確で抑制のきいた描写.モーパッサン(1850-1893)は19世紀フランス文学を代表する屈指の短編小説作家で,実に300篇以上の短篇を書いた.その数ある作品の中から厳選した15篇を収録した.新訳.
内容説明
鋭い観察力に支えられた、的確で抑制のきいた描写、余韻をたたえた味わい深い結末。モーパッサン(一八五〇‐一八九三)は、十九世紀フランス文学を代表する短篇小説の名手で、実に三百篇以上にも及ぶ短篇を書いた。その数ある作品の中から厳選に厳選を重ねた十五篇を収録。新訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
123
富樫倫太郎さんの生活安全課0係のシリーズに、モーパッサンの短篇集の本を短篇の数だけ持っていてそれぞれにカバーの色合いを変えて、その日の気分ごとにさまざまな色のカバーの本を持ち歩いて読んでいるおばあさんの話があり、再読したくなり読みました。オー・ヘンリーもいいのですが、モーパッサンのほうがさらに人生の悲哀と同時にピリッとした部分もあって余韻が残ります。時たまこのような本を読むのもいいですね。2018/02/09
夜長月🌙新潮部
63
モーパッサンは10年の作家期間に300のショートショートを書いています。その中から選りすぐりの15篇。イヤミスもあればどんでん返しやあったかいお話しまで。ちょっとスパイスの効いた作品です。中でも「水の上」「旅路」「初雪」が印象に残っています。「水の上」の水はセーヌ川です。パリからは離れた場所でいかりを沈めたボートに寝っ転がります。夜のとばりが降りて満月が見えます。川面は霧に包まれ穏やかな流れはゆったりしています。これも一つのこの世の天国でしょう。叙情あふれる描写に心安らかになります。そしていかりをあげると2025/12/03
スプーン
50
エスプリの効いたフランスの短編集。良かったです。2022/11/03
みつ
32
大学時代に新潮文庫の3巻本で読んで以来のモーパッサン短篇集。書名は「集」ではなく「選」。暗めの話でもブラック・ユーモア際立つサキと違う彼の持ち味は、やはり絶対に忘れられない結末を持つ「首飾り」が典型か。オー・ヘンリの「古パン」(岩波文庫での題名)のほろ苦さとも異なる「取り返しのつかなさ」が印象的。他にも人生のある一瞬を切り取るというよりは、普仏戦争を題材にした2作のほか、恋愛を扱った作でも生涯を凝縮したような重さを持つ短篇が多い。淡々とした中に悲哀を色濃く滲ませる「初雪」「ジュール伯父さん」が一番の好み。2024/06/15
SIGERU
25
モーパッサンの短篇は新潮文庫版で繙読してきたが、今回、岩波文庫版で読み直した。『首飾り』『初雪』など代表作が網羅され、手堅いラインナップとなっている。ただ、編者の好みなのか、総体としては重めな作品選択だ。例えば、艶笑物は採られていない。かわりに純愛物が多く採録されている。また、普仏戦争物にはユーモラスな短篇も多いが、『二人の友』や『ソヴァージュばあさん』など、苛烈な作品が敢えて選ばれている。そして純愛物も、『椅子直しの女』のように、献身が実を結ばないどころか手ひどく裏切られる趣向なので、なかなかに厳しい。2021/02/09




