出版社内容情報
パリ社交界の華やかさのうちに,老画家ベルタンの第1の恋も,「死の如く強い」第2の恋も,ともに年老いた恋人同士のほかには誰にも知られずに埋もれてゆく.この長篇に流れている老いることの果てしらぬ苦悩こそは作者モーパッサンにとっても切実な問題であった.この小説には作者の深い感動がゆきわたっている.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
15
1889年初出。著者5作目(あとがき)。独身者の生活が耐えられない年齢になっているという台詞(173頁)。日本は単身世帯激増、生涯未婚者が急増しそうな未来が予見されている。支える仕組み、SNSや本読書Mなどでナイスし合うことは殊に、重要に思われる。「独身者というものは若くて、好奇心に富んでいて、貪欲でなければ」(173頁)なんていうことを中年以降の生涯未婚者には言わないでほしい。生きるのに精いっぱいなので。2014/02/26
amanon
1
解説にもある通り、作者が何度も手を入れたということがよくわかるやや歯切れの悪い結末だった。恐らく作者は、幸福な結末が許されないこの小説の犠牲者を、二人の主人公ベルタンとギーユロワ夫人のうちどちらにするかということに最後まで迷ったのではないか?という気がする。実際、本作の山場とでもいうべきロンシエールでは明らかにベルタンとアネットはかなり接近しており、ギーユロワ夫人は明らかに劣勢に立っていた。作者としては、そのままベルタンとアネットが恋仲に陥るというストーリーも考えていたのでは?という気がするのだが。2012/01/27