出版社内容情報
清純な貴族の娘ジャーヌは幸福への期待に胸をふくらませて修道院の寄宿舎を出る.女としての人生の出発は咲きそめたバラのように輝かしかった.が,やがて夫婦愛に自信を失い,一人息子にも背かれ,老いて孫娘を抱く哀切な気持のうちに彼女の人生は光を失ってゆく.女の一生――これを「ささやかな真実」とモーパッサンはいう.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
阿呆った(旧・ことうら)
19
<何のはや、世の中というものは、そんなに人の思うほど善くもなし悪くもなしですわい。>◆夫の裏切り、死産、親の死、親の過去、子供の出奔。主人公の心が純粋で潔癖で、依存的なので、それによってさらに悪い結果をもたらしている面もあります。◆示唆に富んでいて、考えさせられるところも多かったです。2017/03/18
Shinobu
7
あるある。身につまされる人生だ。ジャーヌの思いが細やかに描かれていて、心を乱された。古典で読みにくいかと思っていたけど、サラサラと読み進められた。人に振り回されず、自分の人生を楽しんでいきたいと改めて思う。2021/04/23
りんご
6
幼い時は修道院に入れられ、その後、子爵と結婚、子爵の浮気、息子の放蕩・・・彼女に訪れた人生は。。。2022/12/05
モリータ
6
「到るところに思い出を播いて歩いた、人が種を土に播くように。それは死ぬまで根のたえない種類の思い出であった。自分の心を少しずつこの谷間のひだのすべてに投げ入れているようにジャーヌには思われた。」2012/09/05
Fumoh
5
モーパッサンの人生の悲哀がよく出ているが、モーパッサンはそれだけを描くのではないから好きだ。もちろん身がすくむような不幸の話を描いている。しかし彼の描くフランスの人々は、悲しみに身を滅ぼさないだけのタフさも描かれていると思う。恋に破れて拳銃自殺するようなドイツ青年とは違い、モーパッサンのフランス人はどこか鈍感で、人生を愛している。どうにもならないことこそ人生。その生活の痛みを知っている。だからこそ下ではなく、上を見ることが出来、汚さの中から見る天空が、すこぶる美しく見える。そういうものを彼は持っている。2024/01/14