出版社内容情報
30歳のモーパッサン(1850―1893)が,彗星のように文壇に躍り出た記念すべき中篇小説.普仏戦争を背景に,人間の醜いエゴイズムを痛烈に暴き,人間社会の縮図を見事なまでに描き切った作品.新訳.
内容説明
30歳のモーパッサンが彗星のように文壇に躍り出た記念すべき短篇小説。普仏戦争を背景に、ブルジョワや貴族や修道女や革命家といった連中と1人の娼婦とを対置し、人間のもつ醜いエゴイズムを痛烈に暴いた。人間社会の縮図を見事に描き切ったこの作品は、師フローベールからも絶賛され、その後の作家活動を決定づけた。新訳。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
219
人間を辞めたくなるほど、負の面を強調した本。読後感も暗くなる。他人をさげすんで何も感じない人が幸せに暮らせ、そういったものを感じやすい人は特別に貧乏くじを引かされる。最後の場面でさらにそれが強調される。人間とは何か、綺麗事ではなく見せつけてくれる本。 鬱になりそうだけど、これが現実なんだなぁ。
まふ
136
50年ぶりぐらいの再読。モーパッサンの処女作。普仏戦争に敗れたフランスのルーアン近郊での逃避を企てる同行者の馬車内での出来事。貴人・修道女たちに交じって娼婦が避難するが、プロシャの兵隊の検問に引っかかりそこを切り抜けるための最後の手段とは…。馬車の中で繰り広げられる人間社会の縮図のような会話。社会的弱者である娼婦の純粋の「こころ」が1対10ぐらいの重さで問われる辛い立場。短編であるが重い読後感を残させる名作だった。2024/09/13
ehirano1
125
これはかなりの胸くそ。容赦ない利己主義の顕在化、愛国の偽善、宗教の偽善がリアルに描かれているのが印象的でした。一方で、「刻石流水」を認識させる内容だったと思いました。2024/07/27
マエダ
104
人々のエゴや無関心、偽善、それらの表現が短い文章で無駄がなく書かれている。ストーリーももちろん面白いタイトルの脂肪のかたまりは娼婦の女性の渾名だがなかなか残酷である。2017/10/15
Willie the Wildcat
89
典型的な階級社会をモチーフに、ヒトの心底の暗部を描写。登場人物1人1人の目的と手段、そして根底の大義に垣間見る人間性。薄ら怖いのが、理詰めの論旨で踊らされるヒトの心。対極の心の象徴が、ブールと修道女。前者が「拒んだ」大義、後者が「暗黙の了解」をした大義。表層的には戦争だが、深層的には愛国心が共通点。突き詰めると、戦争も大義を振りかざした論者に振り回される国民、という構図と解釈できる。自己、つまり軸がぶれないこと。表題は、成長と共に軸を取り巻くようになる阻害要素を示唆しているのかもしれない。2019/10/02