出版社内容情報
パリで学位を取って帰郷した男爵の一人息子ペルディカンは二十一歳,遺産相続のため同じ日に修道院から帰って来た従妹カミーユは十八歳,幼ななじみの才子佳人の再会だが,二人の恋のかけひきと意地の張り合いに犠牲者も出る.青春の詩人ミュッセが,恋愛心理の真実を芳醇なロマンの香りに包んで仕上げた「読む」戯曲.一八三四年.
内容説明
パリで学位を取って帰郷した男爵の一人息子ペルディカンは21歳、遺産相続のため同じ日に修道院から帰って来た従妹カミーユは18歳、才子佳人の再会だが、幼なじみの二人の恋のかけひきと意地の張り合いに犠牲者も出る。青春の詩人ミュッセ(1810‐57)が、恋愛心理の真実を芳醇なロマンの香りに包んで仕上げた“読む”戯曲。1834年刊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
114
恋愛に懐疑的な幼馴染への当てつけに純朴な田舎娘と付き合う男爵の倅。場面転換が頻繁で、合唱団が狂言回しや対話役を担うロマン派ならではの型破り。戯曲というよりもはや読み物。ペルディカンの葛藤、悲観的情愛、驕慢なやりとりにはサンドとの恋愛の深傷が反映されており、切れば血の出るような真実味に作者の卓越した自己観察が発揮されている。明らかに悲劇的な話をあえて喜劇的に書くことで風刺的側面や余韻の苦味を深めているのも特筆点。男爵らの軽妙な会話にも緻密な計算が行き届いている。ロマン派的香気・詩情を芳醇に醸し出した代表作。2022/09/10
松本直哉
29
本当は相手のことが好きなのに修道院で男性嫌悪を吹き込まれて出家を決意する女性、その彼女のことを相手の男も本当は好きなのに、別の女性に言い寄るところを見せつけて彼女の嫉妬をかきたてて、それを見た彼女もさらに意趣返しをするという具合に、意地の張り合いといおうか、何とかして相手に対して優位に立ちたい恋愛の心理だろうか、だがその戯れは一人の女性の死によって悲劇的な結末を迎える。それでも恋せずにはいられない人間の愚かさを、皮肉を交えて茶化す喜劇的な登場人物と合唱団が複雑な後味を残すバレンタインデーの読書であった。2023/02/14
S.Mori
12
強烈な印象を残す戯曲です。お互いにいいなずけのような関係にある男女のことが描かれます。ペルディカンは幼馴染のカミーユのことが気に入っていて、結婚したいと思っています。しかし、カミーユは修道院に入っていたせいで、結婚には消極的です。二人のやり取りがユーモラスに詩的に描かれています。詩人でもあったミュッセの資質が台詞の一つ一つに生かされているような気がしました。牧歌的な二人の恋のさや当てが結末で暗転します。恋愛で人の気持ちを弄ぶのは罪であることがよく分かる終わり方でした。2019/08/27
aki
10
許嫁同士が10年ぶり?に再会するも、さあ結婚!とはならずに他人や親を巻き込んで恋愛の駆け引きばかりやってる。最初は、女が男の気持ちを確かめたくてやってるんだろうと思ってたけど、男も男で、女の冗談を間に受けて違う女の子を相手にしてしまうなどどっちも振る舞いがひどい。終いには、2人の恋愛ごっこに巻き込まれた女の子が心労?で死んでしまうし、最後の一行で女が「さようなら」と言っているあたり、結婚は破談になったのか?読んでて面白かったけど、実際こんなめちゃくちゃなことがあったら後味悪いだろうなと思った(笑)2016/05/07
Tenco
3
逃避でも、ロゼットと結ばれるのならそれはそれで良さそうなものだったが、結局そんな勇気はなかった。 カミーユは全ての元凶なうえに、しつこくペルディカンを繋ぎ止めようとして見苦しかった。 ロゼットのことを考えると切ない。2018/01/11