出版社内容情報
ミュッセの「世紀児の告白」を読んだ人びとはロマン主義の激しい渦の中にあえぐ混迷した思想と,炎のような恋愛に苦悶するなまなましい人間の姿の影像をみたであろう.「彼女と彼」はこの同じ恋愛をサンドの立場から書いたもので,彼女の恋愛観,女性の自由の主張,母性的情愛の思想観が骨子をなし,あますところなく表現されている.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
22
虚栄心とプライドばかり高く、自分勝手で甘えん坊で性的に放縦な芸術家気取りのローランに何度も裏切られても最後まで友情を捨てず、病気になれば看病に駆けつけるテレーズはただのお人よしなのだろうか。王侯貴族の庇護でのうのうと食っていたのに、彼らが退場した後は自分で生計を立てる必要に迫られ、生活力のないまま自堕落に流れるロマン主義芸術家が、代わりに庇護を求めるのが、母性的かつ召使的な女性になってしまうのか。ローランやパーマーが二言目には結婚を持ち出すのも、結局は召使を独占的に所有することへの妄執によるものなのだろう2025/04/17
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- 和書
- 父と子の絆