出版社内容情報
大都会の片隅で豺狼の群にとり囲まれ,なぶり殺し同様の死をとげる老音楽家,間もなくそのあとを追う親友の悲歎と思慕,パリ生活の表裏を冷酷無残に描きながら,なお作者の眼底に熱い涙のあることを思わせる小説である.バルザックの小説のうち,「従妹ベット」とならび称される傑作中の傑作である.
内容説明
豺狼の群に囲まれてポンスは死に、老友シュムケもやがて後を追う。「貧しき縁者」第一話『従妹ベット』と姉妹編をなす名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
モリータ
8
めっちゃおもしろかった…。友情で結ばれた人物も、強欲さで敵対する人物も、似たものが対になってるのってミソではない?2014/12/27
rinakko
8
死臭を嗅ぎつけた…というよりか、本来ならまだ助かりそうな病床のポンスを食い物にせんとて、わらわらと寄り集まってくる醜き輩どもの、その企みの恐ろしいことと言ったらもう…。話としてはそこからの“ガリガリ亡者”たちの腹の探り合い、だまくらかし合いは、読みどころじゃがね。せめて、たったひとりのポンスの友人で穢れない天使のような(てか、清らか過ぎ)シュムケだけでも、彼らの毒牙から逃れられますように…と、はらはら頁を繰るのであった。(身分や地位が上がるほどに、驕慢の罪はのっぺりと塗り隠される。ぞわっ…。)2014/02/21
kaze
7
上巻でたっぷりとそれぞれの登場人物の立ち位置と狙いを紹介したところで、いよいよ悪党どもがそれぞれの欲にまみれた駆け引きのドラマを展開する。どいつもこいつも失敗してしまえばええんじゃ!と思いながら読んでいるが、読者の希望は叶わない。ちっ。しかし「人間喜劇」シリーズの読者なら、今、悪巧みを巡らして得た地位や金が永遠のものではないことを知っている。善人には善人の、悪党には悪党の人生それぞれの中で浮き沈みがあり、人間にとっての本当に幸せとは何かなんて結局その本人にしかわからない。2021/09/23
まふ
5
バルザックとしては珍しく救いようのない結末の作品であった。主人公の音楽家ポンスは生涯にわたってこつこつと集めていた美術品を悪漢たちに奪い取られてしまう。穢れなき友人であるシュムケも適当に弄ばされて死んでゆく。いつかはダイナミックな展開になるであろうと期待して結局はカタルシスのないままに終った。ディケンズの「骨董屋」も少し雰囲気は似ていたが、これほど救いようのない結末ではなかった。バルザックは世の中は全てこのような邪悪な魂の者たちが結局は勝利するものである、と我々に伝えているのかもしれない。2019/05/03
もといま。
5
悪魔たちがそれぞれの企みのために大活躍し始める。悪者のまま突っ走る。おとがめもなし。人が死ぬのには、なんてたくさん手続きとお金がいるものなのか。2013/12/16
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